虫とエンカウントしまして
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「神は何故このような試練を...」
誤解を与えないよう説明すると、信仰深いとかじゃなく、今現在置かれている状況が神や仏、ひいては藁にも縋らざるを得ないなだけ。
提出物を持って訪ねた数学準備室。
普段なら扉を開けて先生に手渡すか、机の上に置いて終わり。そんな簡単なことが出来ず、教室の前でプリントを持ったままウロウロしているのは、扉に張り付いている天敵のせいだ。
「なんでこんなとこに虫がいんの...!」
最早助けてほしいより、神様仏様この野郎って気分だよ。
「...せんせー、いないんですかー?せんせー......もー!なんで留守なの「上田」...はい?......あっ」
「なにしてんの、こんなとこで」
「神君!」
「先生ならさっきすれ違ったけど、教務室寄るって」
「どうりで無反応なわけだよ...」
「それ、提出するやつ?机に置いといてくれってさ」
「は、入るには入れなくて...」
「......ああ、なるほど」
言い淀む私と扉を見比べて察した神君は、手にしていたプリントを器用に使い、諸悪の根源を窓から外へ放り出してくれた。
神なんていやしない、なんて思ってたさっきまでの自分へ。いたよ、神。
...まあ、信仰対象じゃなくて恋人だし、読み方も違うけど。
「はい。これでもう平気?」
「あ、ありがとー...!なんて鮮やかな手捌き!流石神君!」
「まあ嫌なことは早く終わらせたいし」
「え、神君も苦手なの?」
「どちらかといえばね。おかげで仕留めるのは上手くなったけど」
「すごっ...」
なにも出来ずにいた私が言うのもなんだけど、苦手なままでも大して支障はないはずなのに。
「神君の爪の垢を煎じて飲ませてください」
「それはちょっと...別に無理にやらなくて良いと思う」
「でも今回みたいに迷惑かけちゃうから...」
「良いよ、かけても。というか迷惑って思ったことないよ。上田に頼ってもらえて嬉しいし」
あー、やっぱり神も仏もこの世にいるな。
だって、爽やかな笑顔の神君には後光が差してるもん。