Happy Birthday to me!
今日は私の誕生日。
「はっぴばーすでーとぅーみー」
予約していたバースデーケーキを引き取りに向かった先は、昔から贔屓にしている近所の洋菓子店。
え?なんで自分で取りに行ったかって?
家族全員手が離せなかったからだよ。
だけど、おかげで良いこともあった。
「プリン、プリン!」
“誕生日だから”とお店のオーナーから貰った、ケーキとは別のおまけ。
「ふふーん......はーあとは深津に会えたら完璧「なにがだピョン」...!?!!えっ?!!」
感情が抑えられなさすぎて遂に具現化されでもしたのか。
大きすぎる独り言に被せられた声は、今し方脳内に思い浮かべた相手。
「どっ...え?!な、なん......えっ?!」
「用事で外出申請してただけピョン。今はその帰りピョン」
驚きと嬉しさでままならない日本語を完璧に読み取り、返答までサラッとしてくれる深津。
流石だ、流石すぎる。これ以上好きにさせてどうする気なの。
「じゃあすぐ帰る?」
「ピョン」
「そっかそっか......んふ...ふふふ...」
「とうとう本当に気が触れたかピョン」
「ひどい!」
まあ、あながち間違ってはいないけど。
だって、誕生日に偶然、好きな人に会えたんだよ?
こんな嬉しいことあったら、そりゃあおかしくもなる。普段の3割増しだよ。
「訂正するピョン」
「え?」
「おかしいのは今に始まったことじゃなかったピョン」
「え???」
「違うのかピョン」
「ち、違いません......あ...私こっちだから、ここでバイバイだね」
楽しい時間はあっという間。ドキドキで麻痺していても、名残惜しいのに変わりはない。
(...でも、休日に、しかも誕生日に会えたんだし、今日は良い日だ)
「それじゃ、また」
「ピョン」
「...行かないの?」
「そのまんま返すピョン」
「私はほら、深津を見送るって義務があるから」
そう真顔で返すと、彼は呆れたように溜息を吐いた。
そして、ポンと頭に手をのせて一言。
「誕生日、おめでとうピョン」
いつもと同じ表情と声で告げられた言葉は、特別な日の最高な贈りものだった。