苦手なんです、これ
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「河田ってさ、苦手な食べ物とかないの?」
「ねぇな」
「そんなことないよね?あるでしょ、ひとつくらい」
「いや。食えねぇ程のもんはねぇ」
「嘘だ!絶対あるもん!」
「本人がねぇっつってんだから嘘なわけあるか」
全くもってその通り。
当事者の言葉以上に説得力のあるものはない、頭では理解している。
しかし、ここで食い下がるわけにはいかないのだ。
「あのね、河田。苦手な食べ物があることは恥ずかしいことじゃないの、人間だもの」
「そうだな」
「アレルギーじゃないからって、食べられない物はあると思うのよ。何故だか分からないけど食べられない、みたいな」
「人によっちゃあな」
「でしょ?だから、あるって言って」
「残念だがオレはねぇ」
粘ればなんとか説得出来るんじゃないか...そんな甘い考えは、どうやら彼に通用しないらしい。
それならもう、直球勝負と行こう。
「...河田はなくても私はあるの!玉葱食べてください!」
「目的はそれか」
「はいそうです!だって食べられないんだもん!」
「開き直ったな」
「なりふりかまってらんないもんね!」
「なに誇らしげにしてんだ」
呆れたように淡々と返され、二の句が告げなくなる。
(やっぱ無理かぁ...)
と、諦めかけたその時。
「...ほれ、こっちの皿入れろ」
俯いていた顔を勢いよくあげると、仕方なさそうにこちらを見る河田と目が合った。
「い、良いの?」
「おう」
「...ありがとう!助かる!」
「まあなんだ、無理すんのも良くねぇかんな」
「だよね、良くない!」
「だからって調子こくでねぇ」
「ごめんなさい!でも出来たらこれからもお願いします!」
「抜かりねぇな......たまにだけだ、良いな」
「はーい」
(...でも、またこんなんあったら食べてくれそうなんだよなぁ)
...なんて、本人に言ったらまた怒られてしまいそうだから、今度は心に留めておく。