苦手なんです、これ
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ザワザワと騒音に包まれる中、私達は静かに動き出す。
「...沢北、プランBよ」
「よし、任せろ」
周囲に気づかれないよう神経を研ぎ澄ませ、素早く的確に。
...なんてカッコつけてみたものの、実際やっていることと言えば、お互いの嫌いな食べ物の交換。場所もファミレスだし。
「うん...多分これで全部かな」
「オレも」
「今回もありがとね」
「おう。オレもトマト食ってもらってるしな」
玉葱が食べられない私と、トマトが食べられない沢北。反対にお互いの食べられないものが食べられる私達は、いつからかこうやって交換するようになった。
つまり、利害の一致。
あまり行儀の良いことじゃないけどね。
「まーたやってんのか、お前ら」
あ、見つかった。
「ふふふ、残念でしたね先輩!プランBはもう遂行されました!」
「なんだそのプランBって」
「苦手な食べ物交換です!残さない為に考え出しました!」
「ちなみに諦めて残すのはプランCなんすよ」
「Aは?」
「泣きながら食べます」
「AはキツいしCはなるべく避けたいから選ぶのは専らBだよね」
「な」
「残さない選択を取ろうとするのは悪くないピョン。でもそれ以前の話、いい加減好き嫌いやめろピョン」
「うっ...で、でも!お互い納得してます!ね、沢北!」
「そうすっよ!」
「それにね、先輩方。玉葱だって美味しく食べてくれる人に食べてもらいたいと思うんです」
「そーそー。トマトだって嫌な顔して食われる為にここまで育ったわけじゃないと思うんすよね」
「屁理屈ばっか言うなピョン」
はい、仰ることはもっともです。
でもね、先輩。
「食べれないんだから仕方ないよねー?」
「なー?」
「開き直るなピョン」
「大丈夫っすよ!トマトに代わる栄養は他で摂るんで!」
「お、沢北良いこと言う!」
「だろ?」
「こいつら反省する気ねぇな」
呆れてジト目な先輩と、能天気に笑う沢北を眺めながら、彼のお皿から移されたトマトを一口。
うん、今日は格別に美味しい。