おんぶ、からの...
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
タイミング良く通りがかった幼馴染を呼び止める。
「楓君、楓君」
「...なんか用」
タイミングが良いのはあくまで私にとってだけど、すんなり応じてくれる様子を見る限り、相手も忙しいわけではないようだ。
ならば、こちらも遠慮する必要はあるまい。
「うん、めっちゃ用ある。ひとまず後ろ向いて屈んでくれる?」
「は?」
「じゃないと話が進まないの。悪いんだけど...ね、お願い!」
口では悪いと言いつつ、断らせる気などないのが伝わったのだろう。
数秒間を置いた後、楓君はくるりと向きを変えて身を屈めてくれた。
「ありがとー......よいしょっと!」
「...おい」
「はい、じゃあそのまま立って」
「......」
「よしよし、それじゃ......発進!」
文句と無言の圧の両方を受け流し、今日一番の目的を高らかに言い放つ。
「なんで」
至極当然な返答だけど、それくらいは想定内。
「そこに道があるからだよ」
「意味分かんねー」
「良いかい、楓君。これはトレーニングなのだよ」
「...トレーニング」
「そう。重りをつけて足腰を鍛えるのと同じ」
「...同じ」
「ついでに言うと持久力もアップ!......多分!」
「...持久力」
興味を引きそうなワードを羅列していく。
果たしてのるかそるか。少し緊張しながら待っていると、僅かな揺れと共にゆっくり景色が動いた。
見事、作戦成功。
「やった!」
「デケー声出すな」
「ごめんごめん。でもさ、てっきり振り落とされると思ってたから意外だな」
「...強制したろーが」
「私が強制したくらいで従うタイプじゃないくせに。今日は機嫌が良いんだね」
「うるせー」
「ふふ。あ、てか楓君って今187だっけ?」
「ん」
「じゃあ今、2mくらいの高さかぁ......ふふ」
「...なに笑ってんだ」
「んー?別に。ただ、良い眺めだなって...ねえねえ、楓君」
「...なに」
「また今度、これやってくれる?」
「...気が向けば」
歩みを止めないまま返ってきた、否定でも肯定でもない答え。
やっぱり、今日は機嫌が良いらしい。