欲しかったやつじゃなーい!
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「あれ...?」
思わずわこぼした言葉に混じるのは、疑問と言うより困惑。
その原因は、他でもない私の手の中。
「......ぎゅう、にゅう」
そう、これである。
様々な飲み物が並ぶ自販機で、私が選んだのはこの牛乳.........ではなく、フルーツミックスのジュースだ。〇〇オレとかじゃない方の。
それが、一体何故...?
いや、それよりも頭を悩ませることがある。
(牛乳飲めないんだよなぁ...どうしよう...)
自販機だから返品だって出来ない。せめて飲めるものなら、今の気分じゃないにしてもまだ良かった。
当たり前だが、手の中のそれをどれだけ見つめても変わることはなく、時間だけが過ぎていく。
さて、どうしたものかと考えを巡らせる中、突然その悩みの種が視界からフェードアウトした。
「!......えっ?」
驚いて顔を上げると、意外な人物が目に映る。
「ふ、深津君...?」
そこに居たのは、同じクラスの深津一成君。
「もらうピョン」
「え?でも...」
「どうせ飲めないピョン」
「...ありがとう!」
思わぬ救世主の登場により、どうにかピンチを切り抜けた。
「正直困ってて......って、あれ?牛乳飲めないの話したっけ?」
「一昨年聞いたピョン」
「よ、よく覚えてたね」
「あと上田さんの顔に書いてあるピョン」
「えっ」
「冗談ピョン」
淡々と語る深君は、回収した手と反対側を前に突き出す。
「代金だピョン」
「え、良いよ別に!処理困ってたし!」
「こういうのはきっちりするピョン。嫌なら牛乳返すピョン」
「うー......じゃあ、有り難く受領しま......ん?」
差し出した手に混じる、硬貨以外のなにか。
よく見るとそれは、ポップな包装が施された飴だった。
「深津君、これ...」
「おまけピョン」
「良いの?」
「ピョン」
肯定らしい一言を残す深津君。
どうやら彼は思っていたよりも少しお茶目で、ずっとずっと優しい男の子らしい。