拍手文①
「えーいじ!」
「あー...?な、んみっ!」
「あははは!引っかかった!」
振り向きざまに人差し指で頬をつつく。
こんな古典的な悪戯に引っ掛かってしまう人いるの?...と思うかもしれないけれど、そこが栄治クオリティ。
「地味に痛ぇんだけど!」
「あはは、ごめんね。でも私も痛いんだよ?指」
「じゃあなんでやったんだよ...」
「スキンシップかな」
「もうちょい別の方法にしてくんね?」
「...怒った?」
「いや、そうじゃな「ごめんね、私の配慮が足りないせいで嫌な思いさせちゃって...」...いや、違うって!」
「私はただ、栄治との何気ないやりとりを思い出にしたかっただけなんだけど...うっうぅ...」
「ちょ...わ、悪かった!怒ってるとかじゃなくて...ほら!驚いたんだって!」
「...本当に?」
「ホント!だから泣くなよ...!」
「しょうがないなぁ、じゃあ許してあげる」
「えっ」
「あと、泣いてないよ」
「えっ」
「ふふ、反応おもしろくて揶揄っちゃった。ごめんね?」
驚いたり、騒いだり、心配そうにしたり、キョトンとしたり...いろんな表情をコロコロ見せてくれる恋人でつい、遊んでしまう。
ほら、今だって口を尖らせてむくれちゃってさ。そっぽ向いてても分かりやすいんだから。
「栄治、こっち向いてよ」
「やだ、またさっきのするつもりだろ?」
「しないよ?相手が構えてたら意味ないでしょ?」
「...たしかに」
「ね?だからこっち向いて?ちょうど栄治に話したかったこと思い出したし」
「わかった...で、話したいこと......っ?!」
振り向く彼が再度言葉を失くしたのは、もちりん私のせい。
でも、さっきのとは違う。頬じゃなく唇に、指じゃなく唇を。注意されたばかりだからそっと優しく触れた。
「...また引っ掛かったね?」
ああ、素直な恋人よ。
今日もキミが愛おしい。