拍手文①
「なぁなぁ、烈」
「.........」
「まだ怒っとんの?」
「.........」
「なぁってば」
恋人が口を聞かなくなって今日で三日目。
振り向いた拍子にほっぺたつついたくらいでそんな怒るもん?
まあたしかに、普段滅多に引っかからない烈が今回珍しく...だったから、うっかりはしゃぎすぎたかもだけど。遺憾です、みたいな顔してたしさ。
そりゃ、悪戯を仕掛けた私が悪い。
でも、連日こんな態度をされては流石に落ち込んでしまう。
「...嫌いになった?」
「ちゃうわ、あほ」
「!」
てっきりまたスルーされるかと思ったのに、まさかの返事。
それも、嬉しい内容を即答で。
「...ホンマ?」
「嘘吐いても意味ないやろ」
「やって...最近ずっと口聞いてくれへんかったし」
「...悪かったわ」
「...変なもん食べた?」
「しばくぞ」
「あ、正常やったわ」
「はぁ......まぁ、オレも大人気ない態度やったしもうええわ」
「仲直りしてくれるん?」
「別に喧嘩はしてへんやろ...ちょおこっち来い」
「なに......んむ?!」
手招きに従って傍へ寄ると、両手でムギュッと顔を挟まれた。
「あほヅラ」
「うっひゃい」
「喋り方も間抜けやな」
「むー!」
「あー聞こえへん聴こえへん......今回はこれであいこにしたる。ええな」
そう言って、手に込められた力が緩められる。
「...ん、ごめんなさい」
「もうえ「まさか烈か引っかかるて思わんかってんもん」...まだ言いよるかキサマ」
「えへへへ」
「その減らず口黙らせたるわ」
「え、暴力はん......!」
言葉を遮ったのは暴言でも冷たい視線でも、もちろん暴力でもなく、優しいキス。
蕩けそうな頭の隅で、これだからやめられないのだと、声に出せない本音がこほれた。