拍手文④
目の前にはスプラッタな映像と飛び交う悲鳴が流れる画面。
「やばいやばいやば......あー!そっちはダメだって!バカ!後ろ...いや下か?とにかく周り見ろって...!」
まあ、悲鳴は隣からも聞こえるけど。
「...栄治君」
「ほら言っ...あああああ!」
「栄治君、うるさい」
大きな身体を縮こませ、分かりやすく恐怖を表現ている恋人にピシャリと一言。
「怖がりなのに見たがりだよね、栄治君」
「う......」
「そんなに怖いならもうやめる?この先もっと酷くなるし」
「い、いや、ダメだ!」
「でも怖いんでしょ?」
「ここでやめる方が余計怖いだろ!......ん?てかなんで酷くなるって知ってんだ?」
「見たことあるもん、私」
「な、なんで?」
「栄治君が見ても大丈夫なやつか確認しなきゃと思って...私は割とホラー好きだし」
「マジか...」
「だから断言する。最後まで見たら絶対、見なきゃ良かったってなるよ」
「マジか...」
「あ、でもトラウマになる程じゃないから!栄治君なら3日以内に忘れると思う!」
「マジ......え?」
「ん?」
納得しきれてない顔でなにか言いたげにしていた栄治君だけど、その前に再び画面から聞こえてくる絶叫につられて肩を大きく震わせた。
ごめん、正直ちょっとかわいい。本当ごめん、栄治君。
「あのさ、無理に見なく「見る!」...え、う、うん...」
「...けど」
「けど?」
「......最後まで一緒に居てほしい」
え、なにそれ......そんなの、当たり前じゃない......って、こんな不純な気持ちでホラー鑑賞なんて、最早フラグ。
...でもさ。
「ふふ、喜んでお供するよ!」
これも醍醐味だから、ね。
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