拍手文④
姿の見えない脅威から逃げ惑う人々、恐怖を倍増させる叫び声、グロテスクなシーン。まさに王道スプラッタホラー。
ついさっきまで見ていた、DVDの内容だ。
「淳君、どうやった?」
「んー、そやなぁ...例えばあのシーンは......」
余裕飄々な態度の恋人が、気になった箇所の考察を話し始める。
「......あそこはなかなか良い演出やったと思うわ。掴みとしては上々やな」
「せやね。中盤は日常の中で迫る恐怖って感じやったし、後引く怖さがあった」
「ああ、そういうたら...」
「うん?」
「今の状況と似てへん?」
「えっ...」
「週末の夜、外は雨、自室で恋人と二人きり......なんや部屋のインテリアも...」
言われてみたら、たしかにそう、かも......って、ちょっと待って。
「ど、どどどどうし...!どうしよ「なーんて、な」...えっ」
「冗談や」
「じょ、うだん...」
「そ、言うてみただけ」
「...もー!心臓に悪い!」
「はは、ごめんな?...まあ似とるんはそうやけど、気づいてへんのやったら言わん方が良かったなぁ」
いや、本当にそうだよ淳君。
ホラー鑑賞の名残が消えないどころか、類似した事実のせいで一層インパクト強くなっちゃったよ。しばらく忘れられないじゃん、これ...。
「...淳君」
「はいはい」
「どうやら事態は深刻を極めとる......ぽい、です」
「そやなぁ」
「...ので!」
「うん」
「しばらくは、うちのボディーガードしてもらいます!」
なりふりなんて、構ってらんない。
「ん、ボクに任せとって」
快諾してくれたのは嬉しいけど、この状況楽しんでるよね、淳君。
はぁ...ここが本当にホラー世界線なら、これって絶対フラグだな。