拍手文④
恋人とホラー映画の鑑賞会なんて、いろんな意味でドキドキなイベント。
「あいつ終わったな、フラグ立てよった」
それを台無しにしてしまう我が恋人よ。
「...烈」
「あー...こいつもや。バンバンバンバンフラグ立てよって...ラノベか」
「烈、おーい...」
「もしくは脚悪いお嬢様やな。立った立った、フラグが立った」
「やっかましいわ!実況か!」
いやもう、台無しってレベルじゃないな、これ。
「あんたさっきからどんだけツッコむん?演者より喋ってない?」
「一緒見たい言うたんそっちやろ、我慢せぇ」
「そ、そやけど...」
「そもそもオレは興味ない言うたしな」
「うっ...」
たしかに、烈の言っていることは間違ってない。
どうせホラーを見るなら恋人と一緒が良い!
...なんて乙女心と好奇心、そして下心を織り交ぜで誘ったのはこっち。彼の方はホラーに興味すらな......ん?
「...烈、もしかして怖いん?」
「は?」
そう、そうだよ。
大敵の場合、人は苦手なものの前じゃ無口になるか饒舌になるかの二択。普段口数の少ない烈がこんなに饒舌になるなんて、大阪人の性を差し引いてもこれしかない!
「そやろ?」
「別に怖ないわ」
はい、図星ですね。
...でも待って?
じゃあ烈は、わざわざ付き合ってくれたってこと?自分は見たくないのに?
「...えへへ」
「なんや、この話のヤバい奴に感化されたんか」
「ちゃうし!」
「嘘つけ、ニヤけっぱなしやないか」
「いや、ホンマちゃうから!」
あらぬ誤解を受けてしまったみたいだけど、全部話すともう二度と一緒に見てくれなさそうだから黙っとこ。