拍手文③
「烈」
「なんや」
「もしこの家にゴ「その先言うたら追い出すで」...メンナサイ」
ゆるめに下投げした軟球が、時速160kmで顔面めがけて返球された気分。
しかも硬球どころか鉄球で。
「あ、ちなみにうちは無理やから...任せたで、烈」
「しばくぞ」
「しゃーないやん、無理なもんは無理なんやから...絶叫しながら家半壊させてええならやるけど」
「ええわけあるかアホ」
ドライ、あまりにもドライ。
梅雨も敗北認めるドライっぷりである。
「...もしこの家にゴ「この家ごと燃やす」...うちよりやばない?」
「一匹出たら他にもおるからな...根絶やしにするんやったらまとめて燃やす方が確実やろ」
「発想こわ......って、話遮らんとってよ」
「お前こそさっき聞いてへんかったんか?......そもそもなんやねん、同じ質問ばっかし「よくぞ聞いてくれた!」...お前も遮っとるやないか」
「まあまあ、おあいこてことで...あんな、友達カップルんとこにゴ......ヤツが出たらしいんよ」
「そら気の毒やな」
「そん時にな、彼氏さんが友達のこと守りながら見事に退治してくれたんやって!」
「...で?」
「え、終わり」
嬉しそうな様子で話す友達を見て、自分の恋人ならどうするだろうと思い、冒頭の質問に戻るわけだ。
仮説なのも本物と遭遇するのは避けたいからであって、本当に出られると困る。
「せやから、烈はうちのこと守ってくれるんかな、とか思ったり思わんかったり...」
「はぁ?常に守っとるやろ」
「え?」
「常に清潔空間保って虫湧かんよう心掛けとる。出る出んの問題以前に出さんようにしとんねや......どっかの虫嫌いの為に」
一見分かりづらいが、蓋を開ければかなりストレートでなんとも彼らしい。
なるほど、こういう守り方もあるのか。
(質問の意図はちょいズレるけど、これはこれで...嬉しい)
「まあなんぼ綺麗にしとっても出る時は出るらしいけどな」
「台無し!」
無慈悲な現実を叩きつけられるも、不思議と不満はない。
うん、今日も我が家は快適だ。