拍手文③
「ノブ君問題です」
「は?」
「ちょっと新しい知識手に入れたからクイズぽくしたくて」
「お、おう...」
「じゃあ今から特徴挙げる生き物がなにか答えてね」
突発的なことでも、こうして付き合ってくれるあたり、私の恋人は素直で優しいと思う。
「不衛生と思われがちだけど実は綺麗好きで」
「待った」
「え、なに?」
「いや、初っ端から候補が絞られすぎだろ」
「もう分かったの?」
「出来れば分かりたくなかった」
「一応聞くけど答えは?」
「ゴ...から始まる4文字のヤツ」
「え?」
「その、ゴ......」
「続き出すね」
「だーもー!ゴキブリ!......あああ!言いたくねぇ!」
「正解!...って、ノブ君、虫平気でしょ?」
「いや、そうでもねぇけど...」
「え、前にカブトムシ見てはしゃいでたじゃん」
「カブトムシは男なら好きだろ、多分」
「じゃあ、カブトムシのメスと思えばなんとかなる!頑張って!」
「思わねぇし思いたくねぇよ!あと頑張る場面に陥りたくもねぇ!」
うん、そりゃそうだ。
これだけ揶揄っておいてなんだが、私も実際に遭遇はしたくない。懇切丁寧にお断りする。
「つーか...なんでそんな知識を...」
「なんかテレビでやってて...お家綺麗にしてても出るのかぁ...って。あ、だいたい侵入経路は玄関が多いらしいしよ」
「うぇ...」
「食べ物があったらどうしても出ちゃうもんだよね。飲食店なんかは「わーわー!それ以上はダメだ!」...ごめん」
この話題になって5分もしてないのに、なんだかやつれたように見えるのは気のせいだろうか。
「じゃあさ、ノブ君はもしヤツらがら出たら私を置きざりにしちゃう?」
「え」
「うぅ、でもノブ君が辛い目に遭うくらいなら...!」
「ま、待て待て!いざって時はオレがやる!」
「...ホント?」
「おう!」
ノブ君、目が泳いでますよ。
でも、私の為に苦手なものへ立ち向かおうとしてくれるのが知れて嬉しい。
(...とりあえず、明日バルサン焚こ)
勇敢な姿も見たいけど、ノブ君が嫌な目に遭わないように私が守らねば...と、ますます防虫対策への意気込みが増した。