拍手文②
「コタツってさ...」
「うん」
「すげぇよな...」
うっとり...なんて表現がぴったりの声色を放つ栄治。
ぽやーっとした顔に身体を小さくまとめた姿は、バスケをしている時とまるで正反対。かわいいです、はい。
...でもさ。
「初めてコタツ使う時、”こんなのでダメになるとか意味分かんねぇ”...って言ってたの誰だっけ?」
「...誰だっけな」
「栄治だよ」
「...うぃっす」
こんなものに堕落などしない、と自信満々にコタツへ入り込んだ彼は一瞬でその虜となり、以来かなりの頻度で使用している。気に入りすぎでしょ。
「オレん家、エアコンとかストーブとか使ってたし、小さい頃からテツとバスケしてばっかでジッとすることもあんまなかったから経験なかったんだよ...」
「まあ、それならね」
「だろ?」
「...で、使ったことないからって甘く見て返り討ちにされた、と」
「し...勝負じゃねぇし、別に...」
「見事な即落ち2コマって感じだったよ」
「うっ...」
たしかに、昔から知っている者よりもある程度成長してからの方が、その衝撃を受けやすいと思う。耐性がないわけだし。
「コタツ最高?」
「ん...」
「もうこれからはコタツを軽んじない?」
「はい...」
「コタツ大好き?」
「うん」
「...私がいるコタツといないコタツ、変わると思う?」
「いてくれなきゃヤダ」
それまでずっと伏せられていた瞳が、真っ直ぐこちらを捉えている。
「...キメ顔なのがちょっとシュール」
「なんだよ、こっちは真剣なのに!」
「だって...ふふ、そんな背中丸めた格好で言われたら...あははっ!」
「ちょ、笑いすぎじゃね...?!」
「ごめんって、ふふふ.........はぁ、笑った笑った」
コタツに即負けした私の恋人は、それでもやっぱり世界一。
「ねぇ、栄治」
「ん?」
「大好きだよ」
「!...オレも、大好き!」
コタツで向かい合いながら確認し合う愛は、どこか間抜けで格好つかない。
そして、最高に暖かかった。