点と点が繋がりまして。
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「ねぇ沢北」
「なんですか」
「最近ずっと思ってたんだけど」
「はい」
「河田ってさぁ...イイ男だよね」
部活終わりのクタクタなこのタイミングで、何故オレはこんなことを聞かされているのか。
(忘れ物なんかしたばっかりに...)
それ以外に、この先輩...上田さんがこんな時間まで校内に居たことも原因ではあるだろう。
(つーかこの人、こんな遅い時間までなにしてたんだ?そんでなんで急に河田さん?)
「先生に勉強見てもらってたから残ってたの。で、帰ろうと思ったら窓からバスケ部が帰るとこ見えてね」
「びっくりした...!え、オレ声に出してました...?」
「いや、顔に」
「あ...そうですか...」
「で、話を戻すけど」
「あ、はい」
「河田ってさぁ...イイ男だよね」
「...ソーデスネ」
「感情がこもってないやり直し!」
「えー...んなこと言っても...」
早く帰りたい...と言う本音は念の為飲み込む。
(すぐ戻るつもりで先輩達待たせてんのに...上田さんと一緒に出たら確実にしめられる)
他でもない、話題に上がった人物に。
とは言え、ここで彼女のことを無視するのは悪手。先輩であること以外に、単純問題後が絶対面倒になるから。
(...ここは上手く切り上げるしかない)
「そりゃたしかにゴツ......逞しいですし、乱ぼ...強いし、ゴリ...ワイルドですけど」
「今の全部本人に言っ良いんだよね?」
「すんませんでした!」
「ふふ......まあでも、その通りなのよ」
「なんだ、上田さんも同じじゃないですか...」
「あの野生味あふれる顔つきに鍛え抜かれた身体、体格に合わず俊敏な動きも出来て器用さも兼ね添えてて...なにより、とっても優しくて紳士的...!硬派でぶっきらぼうと見せかけてのそれよ?ギャップ!!!しかも些細な変化にすぐ気づいてくれる!」
「すみません、途中から誰の話か分かんないんですけど...」
「河田雅史の話よ」
いや、はい、それはもちろん把握していることなのだけど.........でも!
「...オレの知ってる河田さんじゃない!」
「それは沢北が余計なこと言いがちだからじゃない?」
「うっ...」
コンマ1秒も空けずに返された正論に、増したばかりの勢いが一瞬で消えていく。
が、しかし。
それでもやはり、自分の知っている河田雅史という人物から離れていくのだ。特に後半。
たしかに、同性からは憧れの対象として羨望の眼差しを向けられることは多いと思う。
(...けど、河田さんて別にそんな...女子からベタ褒めされるタイプじゃねぇよな?.........てかそれってつまり)
「上田さん.........河田さんのこと好きなんですか?」
こういうことなんじゃないだろうか。
「え?」
「え?...じゃねーよ!は?なに...自覚なしでそんな褒めちぎってたんですか?!」
「褒めるくらい誰でもするでしょ!」
「完全に顔がメスでしたよ!」
「やだー!沢北がセクハラしてくる!誰かー!」
「やめてくださいシャレにならない!!!」
なんてことだ。
あんなに分かりやすい態度で、本人は無自覚。
(逆になんで今まで他の人に気づかれなかったんだよ......あ、話す機会なかったからか)
彼女が残っていたのも、オレが忘れ物をしたのも、窓から河田さんが見えたのも、全部たまたま起きたこと。
「...ねぇ沢北」
「はい」
「私、河田のこと好きだったんだね...」
「みたいですね......今知りましたけど...」
「私も今知った......と言うわけで、行ってくるわ」
「は?ど、どこへ?」
「河田のところ」
「...何故?」
「告白してくる!」
「はぁ!?い、今からですか!?」
「だって寮ならすぐそこだし!善は急げ!じゃーねー!」
凄まじい速さでその場を去る上田さんを、状況が飲み込めないままのオレは見送るしか出来なかった。
「... ホントに告白すんのかな」
他の先輩達もいるのに。
まあ、彼女はそんなことを気にするような人ではないけれど。
それよりも、オレは今からその現場に向かわなければならないわけで。
(...先帰ってもらっとこ)
ポケットから取り出した端末を使って先輩の一人に連絡を入れる。まだ上田さんの公開告白は始まっていないのだろう、了承の返事がすぐに来た。
(あと10分くらい待てば大丈夫だよな、多分)
...なんて呑気に考えていたオレは、翌日、「本気にされなかった」と気落ちした様子で報告してくること、そしてそこから1ヶ月ひたすら上田さんの恋愛成就の為奔走する羽目になることを、まだ知らない。
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