重大ミッション214
name change
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(大丈夫、落ち着いて......よし)
「松本」
震え、つっかえ、上擦りなし...うん、大丈夫普段通りに名前を呼べた。
まずは第一関門突破。
「上田?どうした?」
「ちょっと頼まれごとしてくれない?」
「頼まれごと?」
「あのね、これなんだけど...バスケ部の人達で食べてくれない?」
言い終わると同時にずいっと押し出したのは、どこにでも売ってるチョコレートのお菓子。
「どうした急に...」
「いやほら、今日バレンタインでしょ?友達に配ったりとかで買ってたんだけど...一袋まるまる余っちゃって」
「ああ、なるほど...」
「だからバスケ部にどうかなって。ほら、これ個包装だしファミリーパックだし」
「自分で食べなくて良いのか?」
「私もそうしたいんだけど、ダイエットとかニキビとか......ね?」
もっともらしい言い訳を、怪しまれない程度に羅列していく。
(ここまで言えば...松本なら引き受けてくれるはず...)
「そういうことなら...」
「お、ありがと!」
(よし!計画通り!)
表情には決して出さぬよう、心の中で大きくガッツポーズ。
でも、本番はここから。油断は禁物。
「流石に全員分はないから早い者勝ちってことでよろしくね」
「おう」
「あ、松本もちゃんと食べてよ?すぐ人に譲ったりするでしょ」
「あー...はは、分かった」
「うーん...どうも怪しい...今確保しといて、ほら!」
「分かった分かった...これで良いか?」
「よし、確認!...でもホント助かったよ、ありがとね」
「そんなにか?」
「そんなにだよ...あ、そうだ!」
「ん?」
悟られないよう、極力自然に振る舞いながら再び鞄の中を漁る。
(震えるな私の指、もう少し耐えてくれ...!)
緊張で感覚が消えそうな指先でどうにか摘み上げたのは、これまた市販されているチョコレートのお菓子。
「はい、これ」
「くれるのか?」
「うん」
「けどこっちも貰ってんのに...」
「良いの、代行してくれるお礼」
「なんか悪いな」
「これはおまけだから!」
(だからお願い、これ以上食い下がらないで...!)
余ったからとか、おまけだとか、それっぽい理由を作ってしまうくらい臆病だから。
手作りなんて到底渡せない。量産されたものでも、私にとっては気持ちを贈る大事な役割をのせたチョコ。
「...じゃあ、遠慮なく。ありがとな」
「!うん、どういたしまして」
(やった...!渡せた...!)
本当の気持ちは伝わってないだろうけど、この特別な日に特別な想いを込めた贈り物を、特別な相手に受け取ってもらえた。
2月14日。
重大ミッション、無事成功。