松本君は、
とっても良い人。
あ、これだとあんまり良くない意味にもなりかねないかな。もう少し詳しく言い直そう。
私から見た松本君は、とにかく優しい。
気配り上手と言うべきか。困ってる人がいたらさり気なく声をかけたり、手を貸したりしてる。
私も何度か手助けしてもらった。
松本君は、心が広い。
例えば誰かがぶつかってきても、まず相手の心配をする。大丈夫か?って。
もう少し、自分のことも大事にしよう?ってたまに思う。
松本君は、すごく誠実。
授業態度は真面目だし、提出物なんかの期限もきっちり守る。3年間同じクラスだけど、未提出者一覧に彼の名前があるのを見たことがない。
ちょっとくらい、手も肩の力も抜けば良いのにって思う。
松本君は、少し天然。
普段、友人にもクラスメイトにも後輩にもツッコミを入れることが多いのに、稀に驚く程ボケにまわる。もちろん本人に自覚はなし。
カオスだけど、普段と違った姿が見られる貴重な瞬間。
松本君は、鈍感な人。
しっかり者で頼り甲斐もあるのに、自分のことになるとそれらは一気に形を潜めてしまう。気持ちに疎い人ではないはずだけど。
バスケの時はしっかり駆け引きしてるのに、何故なんだろう。
松本君は、かわいい。
身長は180cmを超えていて、顔つきも中性的ってわけじゃないのに、笑うと幼さが見える。年相応の、少年らしさ。
その笑顔を、もっともっとたくさん出していけば良いのに。
松本君は、かっこいい。
高校バスケ界の頂点に君臨するこの山王でスタメンに入ってて、プレー中の活躍は目を張る。そんな姿を見たら、声援に力が入るのは当然のこと。
バスケをしてる時が、やっぱり一番輝いてる。
松本君は、素敵な人。
優しくて、広い心を持ってて、誠実な人柄で、たまに驚きを与えてくれて、ちょっとぬけてて、かわいくて、かっこいい。
さてさて。
どうやら私は、自分の想像を遥かに上回る程、松本君に夢中らしい。
彼の恋人になりたい、自分のことも好きになってほしい、そう願う気持ちが遂に限界を超えた時、私はその想いを行動に移していた。
「松本君、ちょっと良い?」
優しさに付け込んで、
「お話中にごめんね。沢北君も、遮って本当ごめんね......でも」
心の広さにタカを括って、
「どうしても今じゃなきゃダメなの」
誠実さを逆手にとって、
「好きなの。私と付き合ってくれませんか?」
どこに?...なんてお約束の返しをさせないように、
「松本君、あなたが大好きです」
自分のことだと理解させる為ストレートに。
あの笑顔をもっと近くで見たいから、ずっと近くで応援したいから。
お願い、私を選んでください。
...なんて、下手に見せかけてはいるけれど、我ながら手段を選ばなすぎだと思う。
優しい彼が、後輩の前で告白してきた女の子をぞんざいに扱えるはずがない。むしろ、こちらの心情を気にしてしまっているだろう。
善良な松本君とは正反対に性悪な自分。
でも、だからこそ思う。
良い人すぎる松本君には、私くらいの性格の悪さがちょうど良い、って。
だから、お願い。
私を選んで、松本君。
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