後ろの席の花形君
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(...結局、余計に話せなくなっちゃった)
あれから一週間。
自分なりに頑張ろうとした結果、却って緊張が増して空回りししてばかり。思うように話せないまま、明日に席替えを控えた放課後。
今日も親友は月一開催の部活へ行っている。ちなみに今回は時間がかかる料理らしく、先に帰っていてくれとのことだった。
(話聞いてもらいたかったけど...いつも頼ってばっかだし、今日くらい一人で反省しなきゃなぁ)
席替えが行われるのは明日の一限目。
帰ろうと思いながらも、ついつい名残惜しさが後を引きその場を離れられない。まだ少し猶予はあるけれど、この席でこんな風にゆったり出来るのは、多分これが最後だろう。
...と、しんみりとした気分になりかけていた時、教室の扉が開く音がした。
「上田さん...」
「は、花形君...!」
まるであの日を思い起こさせる光景に、心臓が大きく鳴る。
(どうしよう、緊張する...でも、嬉しい......けど)
「花形君、部活中じゃ...?」
「ああ、今日はミーティングだけなんだ」
「そうなんだ...バスケ部って休みのイメージなかったから意外、だね」
「はは、たしかに...まあ今日みたいなのは滅多にないから、本当たまたまかな」
「そっかぁ」
「上田さんは?今日は一人で?」
「あ...うん、陽菜ちゃんは部活行っちゃって」
「ああ、調理部の」
「うん......って、あれ?花形君、陽菜ちゃんと親しかったっけ...?」
「いや、オレは特別親しいわけじゃないが...上田さんとよく一緒にいたから」
そう言って、花形君は優しく微笑んだ。
ますます速まる鼓動に、このままでは声まで震えてしまいそうになる。
「そ...そういえば前も...こんな感じだったよね、その...席替えの日...」
少しでも気を逸らす為に振った話題は、実際のところさっきまでの会話の延長線。言い終わってから気づき、自分の混乱状態に恥ずかしくなった。
「ああ...あの日もたしか、ここで一人だったところに話を持ちかけたんだったな」
「う、うん...私こんなだから、あの時花形君が提案してくれて本当に助かったんだよ。ありがとう」
「いや、オレこそ。こうして上田さんと楽しく会話が出来るようになってありがたい」
「...は、話すのは三年になってからだもんね」
「そうだな...正直、最初に思ってたイメージとだいぶ変わったんだ。もちろんいい意味で」
「イメージ...?」
「ああ。ずっと物静かな人だと思ってたんだが...」
「あ、うるさかったよね...ごめん、私ったら...」
「そうじゃないさ。いろんな表情が見られるようになって良かった...って思って」
「な、なんか照れる、ね...」
「...いつも物静かな上田さんが友人が来ると明るい表情に変わって、だけど人から声をかけられると困ったように、それでいて一生懸命で」
(花形君...もうこれ以上は死んじゃう...!)
顔が熱くなるのを感じながら必死に平静を保とうとする私と、更に言葉を続ける花形君。
「...そんなキミを、気づいたら好きになってたんだ」
彼の発した言葉は、まるで時間を止める魔法のようだった。
