後ろの席の花形君
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「上田さん」
親友と別れて次の授業の準備をしている最中、声をかけられドキっとする。
これは人と話すのが苦手だからと言うより、相手が花形君だから。
「は、花形君...どうかしたの?」
「これ、上田さんのじゃないか?」
そう言って差し出された手に、ちょこんと乗せられていた消しゴム。どこにでもある量産型の商品だけど、形状からして自分のものだと分かった。
「うん、私の...!」
「やっぱりそうか」
「落としてるの気づかなかった...あ、ありがとう」
「どういたしまして。本当は机に置いておこうかと思ったんだが、もし上田さんのじゃなかったら悪い気がして」
「あ...わざわざごめんね」
「オレがしたくてしたことなんだ、そんなに気にしないでくれ」
「...うん、ありがとう」
お礼を言ったところで予鈴が鳴り、次の授業の準備を始める。こうして花形君の前の席でなにか出来るのも、あと僅か。
(寂しいなぁ...)
受け取ったばかりの消しゴムをギュッと握りしめ、思い出を振り返る。
(...そういえば、あの時もわざわざ言いにきてくれたんだよね)
あの日の放課後、彼は本来部活中だったはず。もちろん真面目な彼のことだから、休憩のタイミングで来てくれたのだろうけど、次の日に伝えても問題なかったことなのに。
一クラスメイトに過ぎない自分の為に合間を縫ってまで行動してくれて、それが嬉しくて。
(...好きだなぁ)
こんな性格の自分が、人を好きになれるなんて思わなかった。
(席替えなんてしたくない...離れたくないな...)
無理だと分かっていても、そう願わずにはいられない。
親友が言った通り、席が離れたところで関係性が崩れたりはしないだろう。もしそうなるとしたら、それは性格を言い訳に行動を起こせない自分の責任。
(頑張るって決めたのに、これじゃダメだよね...)
ウジウジとした気分を取り払うように、もう一度手の中の消しゴムを強く握った。
