後ろの席の花形君
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きっかけは席替え、正確にはその日の放課後。
月一開催の部活に参加中の親友を待っていた時、花形君がやってきて席交換の提案された。
実は私が引き当てた席は花形君の真後ろで、体格差を気にした彼が気を効かしてくれてのこと。席替え直後も心配してくれていたのだが、人と話すのが苦手な性格が祟り、うやむやになってしまった。
「お節介ならすまない」と言う花形君を慌てて否定し、本当は困っていたから有難いという旨を口下手ながらに伝える私に、彼が見せたのは優しい笑顔。
我ながら単純だけど、たったそれだけのことで、花形君がただのクラスメイトではなくなった。
「それにしても奈緒子が恋するなんてねぇ...私も歳をとったわ」
「な、なに言ってるの、陽菜ちゃん」
「感慨深くてさぁ...」
今まで縁遠かった恋バナが、すっかり定例化したランチタイム。
まあ、進展がなさすぎて恋バナと言って良いのか微妙なところではあるけれど。
「今日はなに話したの」
「いつも通りかなぁ...挨拶とかその延長線くらい」
「あれだけ引っ込み思案だった奈緒子がそこまで出来てるのは成長だよ。頑張ってるね」
「ありがとう...でも、もうそれも出来ないかも...」
「え、なんで?」
「だって、来週...席替えなんだもん...」
そう、もうすぐ席替えが行われる。
「...席、離れちゃったら話せなくなるかもしれない」
「ほらほら、弱気にならないの」
「だって...」
「席離れても築いた関係は変わらないでしょ?私とクラス離れても親友のまんま、それが証拠よ」
「陽菜ちゃん...!」
「もういっそ告白しちゃいなさい」
「陽菜ちゃん?!」
「冗談よ、半分は」
「半分って...もう!」
「これでも私堪えてるのよ?大事な親友の心を笑顔ひとつで奪ったあのインテリ眼鏡に掴みかかるの」
「そ、そんな大袈裟な...」
「...ふふ、ちょっと言いすぎたわ。ごめんね。でも、告白すればってのは本当に思ってるのよ?話聞いてる感じ、花形君も奈緒子のこと憎からず想ってる気がするもの」
「そうだと嬉しい、けど...」
「...まあ、決めるのはあんただから無理はしないで。今はなるべく沢山話せるように、ね?」
「...うん、ありがとう。頑張るね!」
「よしよし、その意気」
決意表明と親友からのエールを胸に自分を奮い立たせた。
