後ろの席の花形君
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人と話すのが苦手だ。
面倒くさいとか嫌いとか、そういうマイナスな意味ではない。単純に、緊張して上手く話せないだけ。
家族以外の数少ない普通に話せる親友はよく「奈緒子は本当にシャイだ」と言う。
彼女は、私のことが心配な気持ちが半分で同じ高校にしたらしい。ものすごく申し訳ないと思ったが、その選択をしてもらって本当に良かったと思う。
だって、授業では当てられると分かっていても緊張で声が震え、クラスメイトでもあまり親しくない(と思っている)人から声をかけられると言葉が詰まり心配され、二人一組やグループでの作業なんかはひたすら下を向き続けてしまう...ことが三年の今でも変わらないのだから。あ、プリントが足りなくてもその場で言えず...なんてこともあったな。
とにかく、親友がいなければ三年間切ない気持ちのままお昼ご飯を食べることになっていたかもしれない。
「陽菜ちゃん、いつもありがとう」
「なに突然」
「なんか陽菜ちゃんの有り難みをしみじみ感じて...言わずにはいられなかったの」
「別に私は好きにやってるけどね。奈緒子といたいのも自分の意志だもん」
「陽菜ちゃん...!」
「んふふ、惚れちゃった?」
「ま、前から大好きだよ!」
「やだもうかわいい」
シャイだなんだと言われる私だけど、人並みにいろんな感情は持っている。
それをこんな風に気持ちを曝け出せる相手が極端に少ないだけで。
「...やっぱり、陽菜ちゃんとクラス離れちゃったのさみしいな」
「それも今更すぎ。三年は二年からの持ち上がりなんだし、去年の時点で一緒になれなかったんだからしょうがないでしょ」
「でも...さみしいもん」
「私もさみしいよ。まあ離れてるって言っても真隣だし、朝はこうして話も出来るじゃない」
「そうだけど...」
「ほらもう、今は好きな人と同じクラスなのを喜んだら?」
「陽菜ちゃん!!!」
「騒ついてるから大丈夫よ」
「それでも恥ずかしいの!」
「はいはいごめんね...っと、噂をすれば」
「...!」
「さて、この席の主人も帰ってきたし、私もそろそろ戻るかな」
「う、うん......ありがとう、陽菜ちゃん」
「良いの良いの。じゃ、頑張って」
そう言って、彼女はヒラヒラ手を振りながら自分の教室へ戻って行った。
「...ふぅ、よし」
深呼吸をしてバクバクと鳴る心臓を精一杯宥める。まあそう簡単にコントロールは出来ないけど、心の準備は出来た...つもりだ。
この学校で親友以外に唯一、私が自分から声をかけにいこうとする相手。
その人は、さっきまで親友が腰掛けていた席の主でもある。
「お、おはよう」
私の好きな人。
「ああ、おはよう上田さん」
後ろの席の、花形君。
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