オレなりに、
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『好き』にはいろいろあるが、あれだけストレートに好意をぶつけられて、その意味が分からない程疎くはない。
彼女の素直すぎる行動に、最初はかなり戸惑った。公衆の面前で名前や愛を叫ばれ、その場から逃走してばかりの日々。
しかし、人間慣れてくるもので、1ヶ月も経つ頃には相槌をうてるくらいになっていた。無論、自分だけでなく周りも。
まあ、昼間のように彼女に翻弄されることも少なくないが。
(どうしたもんか...)
悩みの種について考えながら、家までの道を歩く。人の通りがあまり多くないこの時間帯は、考え事をするのにピッタリだった。
やはり、頭を使う時は静かな環境が適している。
長くは続かなかったけれど。
「三井せんぱーーーい!」
自分の名を呼ぶ大きな声と、条件反射で止まる足。
それが誰なのか、振り返る前から分かる。
「三井先輩!」
纏っているのは私服のようだが、ものすごく身に覚えのある光景にデジャブを感じた。
「奇遇ですね!」
「...お前帰宅部っつってなかったか?なんでこの時間にこんなとこいんだよ」
「わ!帰宅部なの覚えてくれてたんですね!」
「そこは喜ぶとこなのか」
「先輩のことならなんでも嬉しいですよ?」
「...で、さっきの質問の答えは」
「あ、私用でこっちに用事がありまして」
「こんな時間までか?なんの用だったんだよ?」
「えーっと、まず病院と」
「...病院?」
「あ、そういえばご存知ないですよね。私、入学直前に風邪拗らせちゃって入院してまして」
「は?マジか」
「マジですよ。拗れに拗れて5月半ばくらいまで休んでました。私、これまでも怪我とか病気によくなってたので定期的に病院通ってるんです」
「大変だな」
「んー...もう慣れてるのでそうでもないです。友達作るのはちょっと出遅れちゃったけど、みんな良い子だから今ではすっかり馴染めましたし」
「茶番劇するくらいだしな」
「えへへ」
「...似てんな」
「え?」
「あ、いや...」
少しだけ自分と似通っている境遇に、つい口が滑ってしまう。
「いや...オレもちょっとな......わりぃ、忘れてくれ」
「分かりました!」
「...頼んどいてなんだけどよ、そんな即答で良いのかお前は」
「良いんです、三井先輩が忘れろと言うなら忘れたことにします」
「...そうか」
「私、尋問や拷問は趣味じゃないので!」
「いや今それあんま関係ねーだろ」
「あははっ」
笑う彼女につられるように、自然と上がる口角。
「...ったく、変な奴だなホント」
口ではそう言いながら、彼女の明るさと自由さに密かに感謝した。