夜に散歩
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「涼しいねぇ」
「あー...秋だからな」
虫達の音色を聞きながら歩く夜道、頬を撫でる風も心地良さを助長させる。
ルームウェアとサンダルで完全近所の人間です、みたいな格好でも趣は感じられるものだ。
「秋っていいよね...ムシムシしないから過ごしやすいもん」
「ほぼ年中家の中で快適に過ごしてるじゃねーか」
「いやー秋はいいなぁ」
「スルーかよ」
「ふふふ」
なにより、隣には愛してやまない人がいる。
「どこまで行くんだ?」
「特に決めてない」
「だろうな」
「分かってて聞いたの?」
「珍しく外出たいとか言うから、もしかしたらって思ったんだよ」
「なにそれかわいい...もう満足してるしすぐ帰ってもいいよ」
「...いや、もうちょい歩こうぜ。奈緒子と外でゆっくりすること、あんまねぇし」
夜だからしっかりした判断は出来ないけど、彼の顔は多分、耳の辺りまで赤いんだろうな。
覗き込んだりしたら逃げられちゃいそうだからしないけど。
「そうだね、久々のシャバの空気だし」
「言い方なんとかなんねーのかよ...」
「...たしかに、これじゃ家が刑務所になっちゃう」
「そこじゃねぇよ」
「うーん、もっと良い表現方法は...」
「普通に外出で良いだろ」
「もう少し特別な感じが良いの」
「なら散歩は?」
「散歩...なんかもう一声!」
「それだと値切り「あっ!」...」
「お散歩デート(夜)にしよう」
「遮った割に微妙だな」
「だって散歩は入れたかったし...でもイメージは夜よりお昼でしょ?だから(夜)!それにデートも外せないもん」
「...そーかよ」
「そーだよ、寿君とのお外デートだよ。久々のお散歩デート楽しいね」
センスがあるかは別として、良い表現だと我ながら思う。
...なんて自賛してみたものの、彼からの返事がない。
不思議に思い振り返ると、隣にいた彼がいつのまにか数歩後ろで立ち止まっていた。
「寿君?どうかし......あ、もしかし気分悪くなっちゃった?」
「...いや」
「本当に?無理しないで良いんだよ、付き合わせちゃってごめ「奈緒子」...うん?」
今度は遮る側になった彼が、深呼吸をひとつ。
再びこちらとの距離を詰めたかと思うと、片手を差し出しながら言葉を放った。
「...デートなら手くらい繋ごうぜ」
彼からの想定外な申し出に、一瞬正常な判断が出来なくなる。
だって、夜でも公道で自分からスキンシップを図るなんてこと、私が外出するのと同じくらいレア。
...だけど、驚きの次にきた嬉しい気持ちは、すぐに脳から伝令を出していて、気づいた時には彼の手をとっていた。
たまの外出も悪くはない。
幸せな気持ちに浸りながら、秋の夜道を二人で歩いた。