｢は、話が飛躍しすぎてびっくり...｣
｢だから、ところでって言ったんだよ｣
｢そうだけど...ど、どうして？｣
｢ああごめん... 上田が気にしてるそれ、悪いことばかりでもないから元気出してもらおうと思って｣
｢元気...？｣
｢両想い｣
｢...はいっ？！｣
｢両想いニキビって言われてるんだって、その位置にできるの｣

あ、そっち...。

“両想い”のワードに、まさか神君も...？と淡い期待を寄せたものの、そんな淡い期待は一瞬で消え去った。

｢あ......そーなんだぁ｣
｢それで、いるの？好きな人｣
｢それは...............｣
｢無言は肯定と捉えても？｣
｢？！待って待って！｣
｢待ったら教えてくれるんだ？｣
｢どう足掻いても暴露一択？！｣
｢あと何秒くらい待てば良い？｣

何故か怒涛の勢いで尋問してくる神君に、内容も相まってたじろいでしまう。

なにか、なにか良い答えはないものか...。

｢えーっと...あっ！神君、あの！｣
｢うん？｣
｢その、フェアじゃないと思うから！......ね？｣

あなたも好きな人がいるのか教えてほしい...そう遠回しに聞いてるようなもの。
これなら流石に諦めるはず。

｢いるよ｣
｢えっ｣
｢オレはいるよ、好きな子｣

なんてことでしょう、ナイスアイデアだと思ったのに瞬殺されてしまった。



いやそれより、今なんて？

好きな人、いるの？
そしてそんな簡単にバラしちゃうの？
えっ...私もう言うしかないやつじゃない？
心身共に告白できるコンディションじゃないよ？

...落ち着け私、好きな人の有無だけなら大丈夫。話の流れ的に不自然なことはない。
むしろ公平性を引き合いに出したくせに黙っていては怪しさを募らせてしまう。

｢...いる｣

告白でもないのに、好きな人の有無を好きな人に暴露するってすごく複雑。

今頃気づいたけど、両想いニキビなら相手になきゃ意味がない。
神君の綺麗な顔にはそんなの見当たらない...てことは、迷信か私の失恋が確定かのどっちか。

...はぁ、さっきまでの和やかな空気が懐かしい。

｢あれ、まだ気が重い？｣
｢...ウン｣
｢おかしいな...励ましたつもりだったんだけど｣
｢神君のせいじゃないから...気にしないで...｣

そう、彼はなにも悪くない、悪いのは.........

｢おのれニキビめ......！｣
｢話戻っちゃったかぁ｣

再びニキビへの憎しみを呪詛のように吐き捨てる。

...こんな見苦しい姿を晒して彼を困らせたいわけじゃないのに。

｢...ごめんね、神君｣
｢なにが？｣
｢さっきから変なとこばっか見せちゃって...迷惑かけてるなって...｣
｢そんなことないから｣
｢でも...｣
｢上田｣

ピンッ...と系の張ったような声で名前を呼ばれ、思わず姿勢を正す。
ずっと逸らしていた視線をゆっくりと神君の方へ向けると、凛とした声とは反対に彼は穏やかに微笑んでいた。

｢大丈夫だから謝らない。気にしすぎるのもストレスだろ？｣
｢ごめ「謝罪よりお礼の方が良いんだけど」...あ、ありがとう......｣
｢はい、どういたしまして｣

...ダメだ、好きがあふれてくる。
好き、大好き。

｢...じんくんすき｣
｢うん、オレも好きだよ｣
｢うれし...............あれ？｣

今、なにが起こったの？