寒暖差の厳しい一日
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家までの道を並んで歩く。
当たり前だけど手は立たせてもらってすぐ離した。付き合ってもないのに繋いだままには出来ないし。
「上田さんさ」
「うん?」
「オレと付き合おっか」
...私、口に出してた?いや、仮に出してたとしてもじゃあ付き合おうとはならない。
驚きのあまり足を止めると彼も立ち止まり向かい合う姿勢になる。
「知ってる?人って抱きしめられると一日のストレスが軽減されんだ」
「ああ、うん...聞いたことある」
「無性に誰かに抱きしめてもらいたくなる時ってない?例えば今日みたいに何もないのに心が満たされない時とか」
どうやら言葉が漏れたのでも、心を読まれたわけでもないらしい。
「だからオレと付き合おう」
まあ私も心は読めないからその結論に至った経緯が謎なんだけど。
「理屈は分かるんだけど話が飛んでて頭が追いつけない」
「年頃の男女は恋人関係でもないのに抱き合ったりしない」
「あ、そこは真面目なんだ」
「こう見えてね」
大切だよね、その辺の線引き。
言ってることも理解出来るんだよ。
でも、それって仙道君にはメリットあるの?
「あるよ。オレ上田さんが好きだから」
「...うっ、そだぁ...」
「ホントだよ」
予想外すぎる言葉、反射的に否定してしまった。
彼は彼で気に止めた様子もなく即答する。
「気を悪くさせたらごめん。本気?」
「もちろん」
「...私、仙道君のことは好きだしさっきのことで感謝もしてる」
「うん」
「あと泣き散らかして申し訳ないとも思ってる」
「あれは正直びっくりしたな」
「あれは正直悪かったよ、本当に」
彼の告白が嘘でないのなら私も誠実に向き合う必要がある。だと言うのに、動揺からか前置きを長くしてしまった。
てかやっぱびっくりしてたんだね、逆に安心した。
...じゃなくて、
しっかりしろ私、深呼吸。
「...その、仙道君と同じ意味の好きになるかは断言出来ないし、都合の良い人って扱いになるもしれないんだよ?」
「好きな子のためならなんてことない。それに好きにさせるから、絶対」
こんな風に熱烈に口説かれて心揺れない人間っているんだろうか。
少なくとも私は心臓バクバクなんだけど。
「急に会いたいって言い出すかもしれないよ」
「喜んで会いに行くよ。一緒にいてほしいって望んでくれるなら」
「気紛れで態度変えるかもしれないし」
「猫みたいで可愛いよ。そうだ、猫に好かれるんだよね、オレ」
「また泣き出すかも」
「泣き疲れて寝ちゃっても代わりに冷やしてあげるよ。安心して」
「...もう一回だけ聞くよ、本当に私で良いの?」
私はすごく面倒な性格だから、取り消すならこれが最後のチャンスだよ。
殆ど傾いてしまったこの気持ちを押し殺せるのも。
今を逃したら簡単には戻せない、それでも良いの?
「上田さんが良いんだ。オレと付き合ってくれますか?」
三度目の申し込み、違うのは語尾が疑問系なとこ。
選択権は私にあってどう答えるか知ってるのも私だけのはずなのに、全部お見通しみたいな顔。
私、ちゃんと確認したからね。
後から文句言わないでね。
「...お願いします」
数分前にも言った気がするな、このセリフ。
暖かかったり寒かったり。
熱くなったり冷静になったり。
最後は熱意に押された。
いろんな寒暖差に振り回された一日、だけどきっともう大丈夫。