毎週月曜の贈りもの
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「はい、今日はマドレーヌ」
「ありがとう。いつも悪いなぁ」
「気にしないで。むしろごめんね、毎回渡すの朝で...荷物多くなるよね」
「全然。むしろ楽しみが増えて嬉しいよ」
彼の性格からして気を遣っているわけではないであろうそのセリフに、ニヤけそうになるのを必死で堪える。
好きな人からの優しい言葉って、どうしてこう的確に急所を突いてくるの?あ、好きだからか。
「ありがとう、仙道君」
週の始まりの日、登校途中で会う彼に前日作ったお菓子を差し入れるようになって半年。
そして、彼に恋してからも同じ月日になる。
うっかりすっ転んで膝を擦りむいた私に、たまたま居合わせた仙道君が絆創膏をくれた。そのお礼に持参していたマフィンをわけたのが...もっと正確に言うと、それを食べた彼のセリフがきっかけになる。
「あ、美味しい」
柔らかな笑みと共に紡がれた言葉は、“美味い”ではなく”美味しい”。
勝手なイメージだけど、前者を使うタイプだと思っていた彼が、少し丁寧な言葉を使うギャップ。ただの先入観とは言え、それが自分の中に思いの外強く刺さってしまい、結果たったこれだけのことで、私は恋に落ちたのだ。
(我ながら、微妙によく分からないときめきポイント...)
もともと好きな相手ならまだしも、完全ノーマークだった相手にこんな落ち方をするのは想定外のこと。
自分のことは自分が一番よく理解している...と思っていた過去の私よ。いくら自分のこと言えど、たかだか十数年ぽっちでそう判断するのは早計だと、今の私から伝えておく。
「週始めの楽しみだからさ、上田さんの差し入れ」
「ふふ、お世辞でも嬉しい」
「お世辞じゃないんだけどなぁ」
「本当に?」
「当然。有難いのはもちろん、本当に美味しいし」
「...ありがとう」
「こちらこそ」
ここ半年で彼との距離はかなり縮まったと思うが、それでもまだ告白には踏み出せない。
だからせめて、言葉の代わりに甘いお菓子に気持ちを込めて大好きな彼に贈る。
もう少し勇気が育つその日まで。
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