私のヒーロー
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先方の都合で予定より早め終わった出張業務。
本来ならば明日...いや今日の昼過ぎに戻ってくるはずだったのを前倒して帰宅した。これは出張先が実家から通える場所だったおかげでもあるだろう。あまり切迫されるのは...と余裕を持ったタイムスケジュールにしておいたのも正解だった。
結局、戻って来れたのは未明になったけれど。
さて、それよりも重要な出来事が今、目の前で起きている。
(......これは)
眼下に映るのは愛する恋人...と、その上に掛かっている自分のジャージ。
込み上げてくる感情が声にならぬよう口元を抑えて一旦冷静になるべく天を仰いだ。
(まいったな...ホント、奈緒子ちゃんは...)
心身共に疲弊した現状において、抜群のヒーリング効果である。
...と思っていたのも束の間、彼女の様子がおかしいことに気がついた。
(...魘されてる?)
強張った顔に小さく呻く声、どうやら見ているのは良い夢ではないらしい。
(だからってこんな時間に起こすのもな...うーん...)
悩みながらも身体は勝手に動いてしまうもので、手は自然と彼女の頭へ伸びていた。起こさないようそっと、彼女への想いを伝えるように。
それが通じたのか、はたまた偶然か、少しずつ表情が和らいでいき、ゆっくりと開かれる瞼。
(あ、やばい起き......)
「あ、きら...くん...」
彼女にとっては、あくまで夢の延長線、現実に自分がここにいるなんて気づいていない。
それでもその瞳は自分を映し、覚束ない声が名を呼んだ。
求められるのなら、応えるのみ。
「もう大丈夫だよ、奈緒子ちゃん」
休めていた手でもう一度頭を撫でながら囁くと、彼女は安堵の微笑みを浮かべた。
そのまま再び眠りについたらしく、穏やかな寝顔と小さな寝息が聞こえてくる。
(悪夢からの脱却完了...っと。ますますちょっかい出せないな、こりゃ)
理性を総動員させて気持ちを落ち着け、彼女一人では有り余るベッドの余白を埋めると、抱きしめるように腕を回した。
(これくらいはまあ、許してもらえるかな......そういやこの上着のことは...起きてからでいいか)
数時間後に見られる彼女の反応を予想しながら目を閉じ、徐々に押し寄せる睡魔に身を任せる。
もしまた彼女が悪夢に魘されても一人にはしない。両腕に優しく込めた力は、さながら決意表明と言ったところか。
次に目覚めた時には笑顔を咲かせている姿が見れることを願い、完全に意識を手放した。