私のヒーロー
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まだ少し重い瞼を数回、ゆっくり瞬かせて脳を覚醒させていく。
寝ぼけながらも、部屋の明るさから起床時間がやってきたのは理解した。
(朝......って、え?!!)
驚いたのは寝過ごしたからじゃない。
ある意味まだ夢の中かもとは思ったけれど、そうじゃなくて。
二度目の眠りにつくまで広く空いていたベッドには自分以外の...なんて言っても相手は決まってるけど、とにかく一人きりだったはず。
(あ、彰君?!なんで...私、寝過ごしちゃった...?)
そこにいたのは、会いたくてたまらなかった人。
穏やかな寝顔をした彰君が、私を抱きしめていた。
彼を起こさないよう、最小限の動きで壁にかけてある時計を確認する。時刻は午前7時を少し回ったばかりだった。出勤日なら遅刻確定だが、そうでない今日はむしろ早起きと言える。
(...って、じゃあなんで彰君が?お昼過ぎって言ってたのに......あっ!)
予定時間より大幅に早い帰宅、それ自体はとても嬉しい。
しかし、今回は素直に喜べない理由があった。
(ジャージ...!)
安眠の為に拝借した、彼のジャージ。
あれから今まで熟睡してしまったのだから、当然今も手元にある。
「どしよう...」
「なにが?」
「?!お、起きてたの...?」
「今、起きたんだ」
「そ、そっか。おはよう......と、おかえりなさい」
「おはよう、ただいま」
彼からの返答と共に抱きしめる力が少し強くなるのが分かった。
たったそれだけのことなのに、つい今しがたまで焦っていたことも気にならなくなっていく。
(夢じゃない、本物の彰君...)
「ん?どうしたの?」
「...あのね、怖い夢を見たの。本当に怖くて、もうダメだと思って...でもその時、彰君が助けてくれたの」
「オレが?」
「うん。そしたらもう怖いとかそう言うの全部なくなって、すごく素敵な夢に変わったの」
「...光栄だな」
「え?」
「大好きな子の夢に登場出来たんだ...それも王子や騎士みたいに」
「...ふふ、本当にカッコよかったよ」
「はは、ありがとう......ところでこれ」
「...あ、これは...その、えっと」
「昨日そんなに寒かったんだ?」
「え?...あ、そ、そうなの!それで、その...ちょっと借りちゃって、勝手にごめんね」
「良いさ、それくらい。傍にいれない時でも役に立てたんだから」
「...ありがとう」
(嘘吐いちゃった...けど、これくらいなら見逃してくれるかな...ごめん、彰君)
小さな嘘に心苦しさを覚える中、彼の言葉でまたじんわりと溢れてくる幸せ。
「彰くん」
「うん?」
「...大好き」
正直に言えなかった代わりに...じゃないけど、彼へのこの気持ちは素直に伝えたいと思った。
「うん、オレも大好き」
窓から差し込む暖かい陽光と、大好きな人。
もう目を閉じなくても、夢の続きはすぐ傍にある。