私のヒーロー
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「...っ!」
バクバクと大きな音で鳴る心臓と、連動するように少し荒くなる呼吸。
その原因は、たった今見た夢のせい。
(こ...っわかった......)
映画に出てくるゾンビみたいな、恐ろしいモノに追いかけられて襲われそうになる...なんて、文字通りの悪夢。泣いて叫びたいのに声が出なくて、夢の中でもパニック状態だった。
思わず辺りを見渡して、この部屋に自分以外の誰もいないことを確認する。
(いないよね、夢だもん...良かったぁ)
安全が確認出来たところで、ようやく安堵の溜息が吐けた。
女性一人には広すぎるベッドの中、癖でつい端に詰めてしまう。だって、本来ならこの隣には同棲中の恋人がいるから。
(こんな時間じゃ彰君も寝てるよね...)
同い年の彼とは大学生の時に出会い、付き合って五年程になる。在学中も卒業してからも、しばらくは一人暮らしのお互いの家を行き来していたけれど、社会人の生活に慣れ始めた頃、遂に同棲をスタートさせた。
寝室を分けなかったのは、スペースやお金の問題もあったけど、お互い眠ってさえいれば多少のことでは起きないのが一番の理由。もし別々に寝なければならない時の為にと、一応ソファーベッドを買ったものの、未だにベッドとしては活用していない。
(あんな夢見ちゃったばっかだし...怖いなぁ)
今までもこのベッドで一人で眠ることは何度かあったが、こんな日は一層彼が恋しくなる。
しかし、あいにく彼は出張中で、帰ってくるのは明日のお昼過ぎだ。
いっそこのまま起きていようかとも思ったけれど、身体に刻まれた習慣がそれを許さない。あんな夢を見た後でも、瞼は重いし頭はボーッとする。
(ダメだ、下手に動くと廊下で寝ちゃいそう...)
もちろん、一人で寝れないなんて歳じゃない。
でも、再び悪夢を見るかもしれない恐怖からは簡単に逃れられなくて、睡魔と恐怖が闘っている。
そんな中で結局辿り着いた、ひとつの解決策。
(...こうなったら久々にアレだ)
くっつきそうな上下の瞼を必死で引き離し、力が抜けかけている両脚を動かして部屋の隅にあるクローゼットを目指す。
扉を開けて左奥にこっそりと仕舞っていたジャージの上着を取り出し、顔を埋めるようにして抱きしめると、心細かった気持ちが少しずつ解れていった。
(彰君の匂い...)
大好きな人の香りに、睡魔とは違った心地良さが押し寄せてくる。
そう、こんな時の一番の解決策は、恋人の私物を抱きしめて眠ること。