怠惰に勝るもの
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「...え?」
「痛いの嫌だし、考えるのも面倒だから切ることにする。長いしちょっとくらい平気でしょ」
「いや、ちょっと待とう?」
「そろそろ胸くらいの長さにしようと思ってたし」
「ねぇ待とうよ、ね?」
「ハサミ...は置いてきちゃったんだよね。あ、カッター発見」
「待って待って待って!」
誰かの忘れ物なのか、教卓に置いてあるカッターを手にしようとするも、ものすこい勢いで待ったをかけられた。
「そんな簡単に切ろうとしないで、それもカッターなんかで...」
「だってハサミ今持ってないから...」
「でもカッターはやめよう、ね?」
「じゃあ仙道君の借して」
「うん、切らないって選択肢はないんだね」
苦笑いしつつ、なお抑止をかける彼はこの短時間でかなり疲弊して見える。
自分のせいだろうが、少し気の毒だ。
「でもこのままじゃどっちにしろ帰れないし...」
「うーん...オレがやってみるから、とりあえず一旦切るのはやめよ?」
「そんな他人様の手を煩わせるなんて」
「目の前で断髪式行われるよりずっとマシだから気にしないで」
「仙道君が行ってからやるよ?」
「だとしても絶対気になって部活に集中出来なくなるから、ね?」
「...わかった、悪いけどお願いします」
「よし、任せて」
その後促されてやって来たのは、一番近くの水道がある場所。
「あ、なるほど...濡らして取れば良いのか」
「本当はぬるま湯とかのが良いんだろうけど」
「そこまでは申し訳なさすぎるから。あと、これならもう自分で出来そうだし、仙道君もう部活戻って大丈夫だよ!」
「ダメ。上田さん途中で面倒になったって切りそうだから」
「......しないよ?」
「その間はダウトだな。良いから大人しくしてくださーい」
「うっ...」
「それに体勢キツいだろうし、下手すると他の部分まで濡れちゃうから」
「...ごめんね、こんな性格なばっかりに」
「いいからいいから」
「お願いします...」
「あ、出来れば残りの髪は結ぶか持っとくかしといてもらえるかな」
「うん、お安い御用です」
ガムテープの付いている部分だけを垂らし、残りをヘアゴムで纏めあげる。
それを確認すると、彼は緩めに調整した流水を大きな手で掬い、少しずつ丁寧にかけ始めた。