怠惰に勝るもの
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端的に自分を紹介するなら『面倒くさがり』程しっくりくるものはない。
例えばお腹が空いていたとして、家になにもないとなれば、大抵の人は買い物なり外食なりを選択するだろう。
だが自分の場合、わざわざ外へ出るくらいならこのままでいい、と食べることを頭から消去するのだ。
面倒くさがりだからと言って、ここまで極端で本末転倒な思考になる人間はあまりいないと思う。
それでもまあ、自分自身のことに対してしか基本的に発動されないのが救いかもしれない。
さて、そんな性格の自分が今直面している出来事。
(...どうしようかな、これ)
顰めっ面の原因が映るよう、手鏡の位置をずらす。写っているのは自身の髪の毛......と、そこに付着しているガムテープ。
当然だが、ヘアアクセではない。
遡ること数分前、友人の手伝いで工作をしていた時のこと。
友人は、子供達に読み聞かせをするボランティアをしていて、そこで使う道具を放課後の時間を利用して作っていた。期日がもう明日に差し迫っていると聞き、どうせすることもないから、と手伝いを申し出たまでは良い。
その作業の最中、不運にも自分の髪にガムテープが張り付いてしまうとは思わなかった。
付着している位置は毛先から数センチ程上で、接着面の半分以上が髪の毛にピッタリとくっついてしまっている。
本当ならそのまま剥がすところだが、不運は重なるらしい。このガムテープは超強力粘着タイプで、毛先に近い部分なのに引っ張ると痛くて仕方ない。
(とりあえず教室まで戻ってきたけど...大丈夫って言った手前、すぐ戻るのもなぁ)
自分より、事故とは言え人の髪の毛にそんなもをくっつけてしまった友人の方が心中穏やかではないはずだ。気に病まない様、笑って事を済ませようとしたのに、今戻ってしまっては意味がなくなる。
(かと言ってこのまま放置は出来ないし...ずっと戻らないのもなぁ...うーん...)
一人っきりの室内、机を爪先で鳴らしながら悩んでいる中、ガラッと扉が開く音がした。
「あれ、上田さん?」
「あ、仙道君...お疲れ様」
「どーも」
振り返った先にいたのは、クラスメイトの仙道君。
「部活中じゃないの?」
「あー...今休憩中。ちょっと忘れ物取りに」
「そうなんだ」
「上田さんは?」
「私はちょっとアクシデントの解決法考えてる」
「アクシデント?」
「そう、これ」
「...うわ、なんでそんなことに」
「あはは」
「笑い事じゃないでしょ...どうすんの、それ。手伝おうか?」
「んー...ありがたいんだけど、このガムテ粘着力すごくて痛いんだよね」
「あーそうか...」
「だから困ってて......やっぱ面倒だなぁ」
悩んでいるうち、再び面倒くさがりな自分が顔を覗かせた。
「よし、切ろう」
それも、また極端に振り切った方向に。