無意識
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身体はフリーズしたまま、言われたことを頭で復唱する。
いやいや......
いやいやいや...!
そんなこと、ある?
「あるんだなぁこれが」
「こ、心読まないで!忘れてるだけであったかもしれないし...」
「覚えてるよ、全部」
「そんなこと...」
「あるよ。なんせ振られた側だ。何が原因かを知っておかないと次に活かせないだろ?」
「...そう、だけど、あ、ほら!気を遣ってるとか良心が痛むからとか!」
「それなら忘れてるなんてことないんじゃない?」
それ以上は反論出来なかった。
人目を憚らず好意をぶつける行為は多かれ少なかれ相手を戸惑わせると同時に、外堀を確実に埋めていける。
けれど、彼はそれを選択をしなかった。
今までの行動が理解したうえでのものなら、逃げ道を作ってくれていたことになる。
他でもない私の為に。
「オレにダメなとこがあったんなら、10回くらいでやめてた」
「...いやその場合は1回で諦めなよ」
「そこはオレの自由。それにそうじゃなかったから諦めなくて正解」
覚えてる、覚えてないの水掛け論は、もう既にどうでもよくなった。
彼に非があるなら、好意が本当に迷惑なら、”あなたが嫌い”ときっぱり拒絶すればいいだけ。律儀に断る理由を考える必要なんてない。
結局、中途半端な友好...彼の言葉を借りるなら秘密の関係を築いてしまった。
その選択をしたのは紛れもなく自分自身。
「上田さん」
「...なんでしょう」
軽やかな口調の彼とは反対に、こっちはいろんな感情が一気に溢れて胸焼けを起こしそうだ。
「この関係も捨てがたいけど、今ならもっと魅力的な関係になれる気がするんだ。これってオレの気のせい?」
大層素敵な笑顔で問いかける彼は、正直意地が悪いと思う。
ここで素直に望む返事をしてしまうのは悔しいが、意表をつける余裕もない。
完全に押し黙ってしまった私を前に、彼は再びあのセリフを口にした。
「上田さん、オレと付き合おう」
と。
まるで、こちらの答えがどんなものか確信でもしたように、今までで一番優しい声音だった。
秘密の関係は今をもって終了です。