Pleasa fall in love with me
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歩み進めていた足が止まる。
意味を理解しようと必死に頭を回転させるが、上手くまとまらない。このままじゃ、頭よりも先に目が回ってしまいそうだ。
そんなぐちゃぐちゃな思考の中で、たった二文字だけが反芻し続ける。
(...好きって、好き...?私の知ってる好き?...え、え......え?!)
整理が終わらないまま、それでも身体が動こうとする様は、まさに本能的なもの。
セメントで固められたみたいだった足は、気づけば踵を返しで走り出そうとしていた。
「おい待て、何故逃げようとする」
あっさり阻止されてしまったけれど。
「は、離して!お願いします!後生!離して!」
「断る。そして往来でそんな叫び方はやめろ、いくら人が少なくてもシャレにならん」
「ご、ごめん......でも...!」
逃亡を諦めていないのがバレているのか、腕はガッシリと掴まれて離してもらえない。
「好きになれって言ったのは上田だったな」
「ほ、本当に好きなってもらえるとか、思ってなかった、から...」
「へぇ?じゃあなんで言ったんだ?」
「そ、それはその......す、好きになってほしかった、から...」
「そうか、今まさにそれが叶ったわけだな」
楽しそうでいて、芯のある声。
(同じ、あの時と...)
つられるように、逸らしていた顔が上がっていく。
「おっ、やっと目ぇ合ったな」
ほんの少し前まで過去を懐かしんで、その矢先に好きな人に会えて、気持ちが昂ってしまった。そのせいで、都合の良い妄想が繰り広げられているだけ。
そう思っていたのに。
(妄想じゃないなら、これって......)
「...藤真」
「ん?」
「ちょっと私をあの壁にぶつけてもらっても?」
「するか、そんなこと」
「後生だから!」
「さっきも言ってなかったか、それ」
「言ったけど聞いてはもらえなかったからセーフでしょ!」
「なら、今回も断る」
「なんで...」
「したくねぇんだよ。そもそも不要だしな」
「ひ、必要かどうかは私が「言っとくけどな」...?」
「これ、夢じゃねぇから」
妄想でないのならと、考えたもうひとつの可能性さえも一刀両断されてしまった。
それはもう綺麗に、スッパリと。まるで、観念しろとでも言われているみたいに。
「オレに好きになってほしい...って気持ち、変わってないな?」
真っ直ぐ見つめてくる目に、もう悪足掻きをしようとは思えなかった。
「...うん、好きになってほしい」
今までと同じように、本音を。
「さて、と......じゃあもうひとつ、はっきりさせとかなきゃな」
いつの間にか腕から両手へと移動した拘束は、壊れ物でも扱うように優しい。
「上田」
「...うん」
「オレと、付き合ってほしい」
思い出したように込み上げてくる感情で上手く紡げない言葉の代わりに、その手を握り返し、小さく頷いた。
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