仙道くんとユーレイさん
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『キミ、アレも見えてるんだよね?』
「黒いモヤモヤでなら...あ、レイコさんのことははっきり見えてますよ。ちゃんと人型で」
『そう......いや待ってレイコって誰』
「あ、すみません...呼び方困るなーって。幽霊のレイでレイコさんです」
『私ちゃんと名前あるんだけど...まあいっか。ひとまずこっちの問題を片付けなきゃね』
くるりと向きを変え腕を組みながら再び黒モヤを見下ろすその姿は、迫力の中に凛とした美しさをも感じさせる。
対して黒モヤの方だが......あの時の不気味さはどこへやら。完全に萎縮してしまったようで、その存在を認識した当初よりもずっと小さく見える。
『すぐ終わらすからちょっと待っててもらえる?』
「あ、はい」
そこからの彼女の行動は早かった。
なにやら歯切れ悪そうな答えを羅列していく黒モヤを一蹴し、圧倒的な力(言葉)で捩じ伏せたかと思うと、ダメ押しの圧力(やはり言葉)でトドメを刺す。
『いい?次この子の周り彷徨いたら二度と受肉出来なくするから覚えときなさい』
今になって耳が慣れてきたのに無意味だったな...と、霧散していく黒モヤを見つめながら思った。
『...とりあえず最初に言っておきたいことがあるの』
「はい」
『私、レイコじゃないんだけど』
「はははっ」
『笑い事じゃないの!』
「いやぁ、まさかそこからスタートと思わなくて......あ、そうだ」
『なに?』
「とりあえず続きは起きてからでいいですか?眠いんで」
『は?』
彼女の反応はもっともだが、こちらも譲れないものがある。
そう、睡眠。
三大欲求のひとつと謎の究明を天秤にかけ、傾いたのは前者だった。もとより寝直す予定でいた脳がその決定を覆すことはない...と言うのが己の身体の主張らしい。
怒られるか呆れられるか、あるいはその両方を覚悟していたが、意外にも彼女の答えは肯定的だった。
『あー...うん。そうだね、そうしよう。時間も時間だし』
すんなりと提案を受け入れてくれ有難い反面、少し拍子抜けした気分になる。
「お願いしといてなんですけど、許可もらえると思わなかったな」
『今は寝る時間なんだし普通でしょ。それにキミが寝てたのを邪魔しちゃったようなものだし』
存在はファンタジーでも、その口から紡がれる言葉は現実的かつ常識的でなんだか面白い。
「...それじゃ明日またよろしくお願いします、レイコさん」
だからレイコじゃないって!と叫ぶ彼女の声を聞きながらようやく二度目の眠りについた。