勘が働いたと言えばまた、根拠がどうのと呆れられるかもしれない。

『(なに、問題発生？)』
「(...かは、まだ分かんないんですけど)」

でももし、オレと同じだったら？

「(やっぱ様子が変な気がするんですよ、こいつ。レイコさんから見てどうです？)」
『(うーん、まだ2回しか見たことない相手だし...)』
「(そうなんですけど...あ、ちょっと待って)」

ここで改めて言っておくが、オレにとっての会話相手は二人だでも、傍から見ればオレが話をしているのは一人だけ。

「...なにボーッとしてやがる」

つまり、流川がなにかしらの反応を示せば、必然的に意識はそちらへ集中することになる。

「悪い悪い。なんでかなーって考えてたからな」
「お前には関係ねぇ」
「ドライだな、ホント」
「うるせぇ、どあほう」

なんつー可愛げのない......別に良いけど。

「(...悪いんだけどレイコさん、流川の身体になんかおかしいとこないか見てくれませんか？多分、手とか脚辺りだと思うんで)」
『(分かった。でも見つけられるか断言は出来ないからね)』
「(了解、ありがとうございます)......ふー...」
「...なんだよ」
「...いや、別に？」

状況的に仕方ないとはいえ、流川と会話しながらレイコさんとも意思疎通......分かっちゃいたが、同時進行ってキツイな。
しかも片方はオレしか認識してないし。

「...関係ない、か」
「勝負すんのもしねーのも、オレの勝手だ」
「受けるかどうかはオレの意見も聞いてほしいんだけど、一応」
「知るか」
「マイペースだな、お前」
「おめーに言われたくねぇ」
「はは、そうだな」
「...話はそんだけか」
「んー、そうだな...」

ダメだ、帰りたいオーラ全開が透けて見える。
既に不審な場面を何度か見せてしまっている手前、これ以上引き留めるのは厳しいかもしれない。解決どころかまだ原因も聞けてないのに、弱ったな。

『(えー、こちらレイコ。お話し中ごめんなさい)』

多分、天の声ってのはこういうのを指すんだろう。
良いのか悪いのか......いや、前者一択か。初対面の時もだが、タイミングの絶妙さに感心してしまう。

「(大丈夫です、続けてください)」
『(ちょっと様子見させてもらったけど、あんまり良いとは言えない状況、かも)』
「(それ、オレが考えてるので合ってますか？)」
『(多分)』
「(それじゃあ...)」
『(...仙道君の時と同系、かな)』

なるほど。
当たらなくて良い予感は的中。どうやら、事態は本格的に深刻ルートへと進路を定めてしまったようだ。

「流川」
「...まだなんか「もう少し話さないか？」...は？」

けれど、ピンチはチャンス。

「な？」

再び訝しんだ眼差しを向ける小生意気な相手を引き留めるのに、もう中途半端な迷いはいらない。