仙道くんと流川くん


『知り合い?』
「ほら、こないだウチと練習試合したとこのルーキーですよ。覚えてません?」
『んー?』

少し前にウチの学校であった、湘北高校との練習試合。
ボディガードだからと、その日はレイコさんも付き添いとして学校へ来ていた。付き添いと言っても、彼女自身は校内敷地に留まるだけで、あまり試合自体は見ていなかったようだけど。
曰く、もし万が一視認出来る人が居て悪霊扱いされたら嫌なのと、ずっとくっついていたら邪魔になるからと、本人なりの配慮らしい。

(...ま、分かんなくても当然か。ユニ着てるわけでもねーし)

『あ、プレーも応援もすごかった子か』
「あれ、分かるんですか?」
『外まで歓声すごかったからね。印象に残ってる』

なるほど、初見の印象とは大事だ。

『違う子だった?』
「いえ。合ってます、そいつで......にしても変だな」
『変?』
「いや、なんつーか動きが硬い?って感じがして」
『...そう?』
「ただの自主練にしては、ですけど。どっか痛めでもしたのかな」
『なら声かけたら?どうせ知り合いなんだし』
「そうですね。じゃ、行きましょうか」
『うん......あ、彼は見えたりしない?』
「どうですかね...そんな話したことないんで......まあ大丈夫だとは思いますよ」
『どうして?』
「仮にそうでもあいつ気にしなさそうだから」
『根拠が弱い』
「とりあえずオレの後ろ.....あっ」
『えっ?』
「目ぇ合っちゃいました」
『...早く行きなさい』
「ボディーガードは離れたらダメでしょ、行きますよ。ほら、流川めっちゃこっち見てるし。急がないと笑顔で誤魔化すのも限界ですよ」
『だから早く行きなさいって、私は目の届くとこにいるから!用があったら呼んで!』
「それオレがやばい人になるやつ......あっ、なんかすごい怪訝な顔してる、既に不審者を見る目」
『ほら、えっと......テレパシーとか!」
「いやそんなの出来ませんよ。レイコさん出来るんですか?」
『したことないけど今ならいける気がする、ノリで!』
「ノリ」

そんなバカな...とは思ったけれど、非科学的な状況を過ごしている今、可能性はゼロどころか半分以上ありそうな気もする。
なにより、レイコさんなら出来るんだろうと思った。彼女にはまた、根拠が云々と言われてしまいそうだし、実際そんなものはない。

『(テステス、こちらレイコ。どーぞ)』

そして、その予想は的中。
彼女は苦し紛れの言い訳を見事現実にした。多分、本人もこうなるとは思ってなかっただろう。

...でも、

「(すげーな、レイコさん......)」
『ほらね、だから言ったでしょ?』
「え?」
『え?』
「今の声出してないですけど...」
『えっ』

ここまでの展開は予想してなかったな。

『...多才だね』
「はは、どーも」

笑うしかないだろ、こんなの。
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