仙道くんとユーレイさん
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『うーん...どこからどう話せばいいのやら...』
なんて頭を悩ませつつも、苦笑いをこぼすくらいには余裕が戻ったらしい。
「そんなに複雑な経緯が?」
『複雑というか、私の身の上話ありきじゃないと説明しづらくて...』
「オレが聞いても良いことなら話してください」
『良いの?』
「もちろん」
『...わかった。でもあまり重く捉えないでね』
「ええ」
『気楽に聞いて大丈夫だから』
「わかりました」
『実を言うと昨日はね...』
「はい」
『大切な家族の命日だったの』
「すみません、やっぱ一旦待ってもらっても良いですか?」
正直、遠慮がちな前置きに油断していた。
もちろん、それなりに身構えていたつもりだったけれど、それはあくまで初期装備みたいなもの。彼女の告白を前に、その装備は消え去ってしまった。
『どうしかした?』
「その......思いの外ヘビーな内容だったもので...」
『ああ、重いだけに?』
「いや、そういう意味で言ったわけじゃないんですけど」
彼女が言ったように、本人にとっては大して重い話ではないのだろう。他意なく発した言葉をジョークと捉えるくらいだし。
(気を抜きすぎて話の腰折っちまったな......なんて言って再開させんのが正解か...)
「...本当に大丈夫なんですか?」
頭をフル回転させて絞り出した割には、なんともありきたりな答えである。
しかし、そのシンプルさは彼女に意図を伝えるのには十分なようだった。
『気楽にって言ったのにごめん、周りくどいのもなんだと思って...』
「いや、そんな...オレの方こそ急に遮って......すみません、思い出させちゃって」
『平気だよ。もう5...いえ、6年も経つんだもの』
だとしても、辛い記憶に変わりはないはず。
現にその家族の命日である昨日は、彼女にとって......そして自分にとっての大きな分岐点になった。
そうでなければ、今こうして対話することもなかったかもしれない。
『私が感傷に浸りすぎてただけ......でも、そうね。キミの言う通りでもあるかな』
「レイコさん...」
『...私ね、キミのこと前から知ってたの』
「え?」
『こんなこと言うのもアレなんだけど...キミを見てると思い出すの。あの子...ケンちゃんを』
愛しむような、悲しむような...今まで見た中で一番優しい表情をした彼女がいた。