怪我の功名
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「どうかしたのか?こんなところで」
「あ、あぁえっと...その、あの、ちょっと...」
分かりやすくテンパるクラスメイトを前に、彼は不思議そうな表情でこちらを伺っている。
本来なら彼と話せて幸せでたまらないけど、今は素直に喜べない。
だって体操服のままだし、履き物は左右で違うし、その片方は落としてしまうし、多分顔は赤くなっているだろう。
よりにもよって、こんな見っともない姿を晒してしまうなんて......やっぱりツイてない。
「怪我、か?」
「...うん」
肯定の返事と何も履いていない片足、これらを見てすぐに状況を察したらしい彼の行動は速かった。
遠慮する私を制し、返事を聞く前に階段を降りて行ったかと思ったら、あっという間に戻ってもう目の前。
「ありがとう...それと本当ごめんね、こんなの取りに行かせちゃって...」
受け取ったスリッパを履き直しながら、お礼と謝罪を伝える。
「気にしなくていい。...その足だと歩きづらいんじゃないか?教室まで手を貸そう」
「えっ?!あ、あの、ありがたいんだけど!着替えなきゃで、更衣室に... 」
「それならちょうど良い、オレもそっち方面に用事があるから一緒に行こう」
そう言って、彼は笑顔で手を差し出した。
どうしようかと迷ったものの、せっかくの厚意を無碍にするのは気が引ける。ここは素直に甘えさせてもらうのがお互いの為だ。
......と、建前でそれっぽく自分に言い聞かせてみる。
ようやく運が上がってきたかも...!と、飛び跳ねたいくらい喜んでいるのが本音。我ながら現金すぎる。
「痛むか?」
「ううん、平気。捻挫って言っても軽いものだし」
「そうなのか?てっきり酷く痛むのかと...」
「え、なんで?」
「踊り場に居た時、顔が赤かっただろう?」
「...!そ、れはその......た、体育で走った後だったし...あとその、ひ、一人で変な動きしてるの見られて、は...恥ずかしかったから...」
しどろもどろになりながら説明した内容、これは嘘じゃない。むしろ真実。
ちょっと罪悪感はあるけど、幸い彼は納得した様子で頷いている。
...しかし本当に優しい人だな。
今だって歩くペースを自分に合わせてくれている。怪我のことを差し引いても歩幅はかなり違うはずだから、かなりゆっくり歩いているのに、こちらへの気遣いも忘れない。
それに比べて自分ときたら。