オレと彼女とあいつとゲーム
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「ほな次はこれや」
「んー.........テトロドトキシン!」
「やるやないか」
「せやろ?」
幼馴染と自分の彼女の楽しげな声と、目の前に広がる光景。
それに似つかわしくない物騒なワード。
少し席を外した間に一体...。
「...お前らなにしてん」
思わず心の声がそのまま口に出てしまったが、おかげでこちらの存在に気付いたらしい。
「あ、南」
「なんや遅かったな」
「矢嶋に捕まってん。ええから早よ質問答えや」
「上田、お前の彼氏目つき悪すぎとちゃうか?」
「否定は出来んけど岸本には言われたないと思う」
そもそもお前の幼馴染でもあるだろう...と言う言葉は飲み込んだ。
でないといつまで経っても本題に辿り着けない。
催促するようにジト目で当人達を見下ろすと、漸く経緯を話し始めた。
「南が出てってからなんや暇やなぁて...そしたら岸本がゲームしよ言うてくれてん」
「お前が騒ぎよるから付き合うたったんやろ」
「そんな騒いでへんし!」
「嘘つけ、クラスの奴に子守りタイム言われたやないか」
「...そんなこんなで背中に書いた文字当てるゲームしててん」
「都合悪なったらスルーか、おい」
毒吐く様子を見るあたり、岸本の話す通りで間違っていないのだろう。
経緯は理解したが、正直なところ自分以外の男が至近距離で彼女と戯れているのは面白くない。
たとえ相手に友情以上の気持ちがなかろうが、彼女より付き合いの長い幼馴染だろうが、その幼馴染が気を遣って素手でなくペンを使って文字を記していようが。
「...どうでもええけどテトロドトキシンてなんや」
幼稚な嫉妬心を抱いてしまった後ろめたさは隠しつつ、さっきから感じていた疑問を投げかける。
「毒!」
「主にフグが持っとる毒やな」
「あほ、んなもん知っとるわ。そない物騒な言葉セレクトしとる理由聞いてんねん」
「あ、そっち?」
「それやったらそう言うたらええやろ」
「分かるやろ普通...ああ、あほやったなお前ら」
「岸本と一緒にせんといて!」
「こっちのセリフや」
「ちなみにセレクトは特に考えてへんよ」
「話戻すん急すぎやろ。走り屋のドリフトレベルの荒さやぞ」
「しゃあないやん。南、さっきから説明待って......あ、せや南もやろ!」
「マイペースすぎやろ......おい南、指名入っとんで」
「...ん」
手持ち無沙汰の原因だった自分が戻ってきたのに続ける必要はあるのか。
...と思ったけれど、せっかくの誘いを無碍にするのも憚られる。時間もあることだし。
「あ、縛りはないけどちょっとした捻りは入れてんねん」
なにを書こうかと頭を巡らせていた中、上田が思い出したように声をあげた。
「...捻り?」
「書いたこと当てるだけやとおもんないやろ」
「んー... 見た方が早いんちゃう?ちょお岸本、後ろ向き!」
「なんでオレ「早よ!」.........」
早々に抵抗を諦め、言われるがまま行動する姿に少しだけ同情心が顔を覗かせる。
なんせ190近くある体格に穏やかとは程遠い性格の男が、たった一人の女子の言いなりになっているのだから。
「南、よう見とってな」
「おー...」
こちらの相槌を確認すると、彼女はペンを手にして広い背中に文字を書き記していく。
やけに画数が多いような...漢字も使用可能なのか?
「はい、答えは?」
「アイアンメイデン」
「正解!」
「なんでやねん」
ついベタなツッコミを入れてしまったが、状況的に仕方あるまい。
「全然違う言葉やったやろ、漢字と平仮名どこいったんや」
「や、これが捻りなんよ!」
「せや、”運命”と書いて”さだめ”と読む的なもんや」
「今のは”鉄の処女”やから”アイアンメイデン”」
「中世ヨーロッパの拷問器具やな」
「さっきのもそのままやのうて、”TTX”て書いてなんの略か当てる...みたいな」
「単純に長いしな」
「あとは”英語の課題”て書いて」
「”やってへん”とかな」
「ほーん...」
捻りどころか自由がすぎないか。
たしかにそのままでは面白みに欠ける...と言うのは理解出来る。しかし、これでは相手との意思疎通レベルに左右される高難度ゲームな気がしてならない。
あとやっぱり内容は物騒だし課題はやれ。
「ほな次、南の番!問題出すんと当てるんどっちがええ?」
「どっちでもええわ」
「せやったら回答者からにしよ!最初うちが書く!そん次は岸本が出題してな」
「おう」
「オレもう「岸本」...おう」
「お前弱すぎやろ」
「お前の彼女が強すぎんねやろ」
まあ、それは否定出来ない。