キラキラなお星様
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七夕。
年に一度、彦星と織姫の逢瀬が叶う日。
残念なことに月明かりがやや強く、絶好の観測日和とは言い切れないのが惜しい。別に星空を眺めるようなロマンチストではないが、外出ついでに眺めてみるかと思っていた分、少々残念だ。
けれど、次の曲がり角を抜ければ街灯の影響を受けづらい場所に出るし、少しは期待出来るかれない。
そうして角を曲がった時、目に映したものは満点の星空...
...ではなかった。
「...不審者」
一瞬止まった時を戻したのは、己の口から発した不穏なフレーズ。本来、あまり言葉にしない方がいい類のものだろうが、過ぎたことは仕方ない。
暗がりの中に、大きな布のようなものを頭に被せた人のようなものが立っていたら、同じセリフを放つか、驚きまたは恐怖のあまり言葉を失うかの二択だろう、多分。
さて、困った。
家に帰るには、この不審者(暫定)の傍を通り抜けなければならない。今はまだこちらに気づいていないようだが、いつ......あ。
「あれ、烈?」
「人違いです」
条件反射なのか、それとも脊髄反射なのか。
合っているのにも関わらず、普段大して使わない敬語にしてまでの否定。関わらない方が吉と、本能が告げていた。
しかし、告げるだけで叶わないのが現実。
「人違いちゃうやん!どっからどう見てもあんたは烈、うちの幼馴染!」
名前を呼ばれた時点で察してはいたが、不審者の正体は幼馴染の奈緒子だった。
「うっさ...ツヨシでもヒロシでもええから声のボリューム下げや。近所迷惑なるやろ」
「あ、ごめん、つい」
「大体お前今何時やと......ホンマお前、こんな時間になにしてんのや...」
「見て分からん?」
「ハロウィンやったらまだだいぶ先やで」
「仮装ちゃうし!」
「ほなやっぱ不審者か。110番せなあかんな」
「不審者でもないわ!......って、やっぱてなに?不審者確定事項なん?!」
「夏の夜中に屋外でデッカい布被っとる奴を不審者て呼ばん方がおかしいやろ」
「...否定しきれんのが悔しい」
そう言いながら、会話の最中も頭まで覆っていた布を肩にかけるように巻き直す。
ちなみに、布の正体はバスタオルらしい。判明したところでなにも解決しないが、通りでデカイわけだと意味の分からない納得はあった。
「で?結局なにしてんのや、アホみたいな格好して」
「アホは余計!...今日、七夕やから天の川見れへんかなて」
「天の川からハロウィン仮装擬きに繋がる理由が分からんわ」
「や、これは蚊除けっちゅーか...長袖出すん面倒で代わりにしとったんやけど...」
「けど?」
「思ったより星見えへんくて...視界暗くしたらよう見えるんちゃうかなて...」
「アホ。元々明るい方でもないのに変わらへんわ」
「それは体験済みですぅ!」
「アホ」
「アホアホ言うな!アホ烈!」
「お前にだけは言われたないわ」
「腹立つ...はぁ、まあええわ。よう見えへんし帰ろ」
「しゃーないから送ったるわ」
「ええの?」
「方向同じやろ。あと、万が一...」
「え、心配してくれるん?珍し「補導されたら哀れやからな」...言い方!」
「早よ行くで」
不満気にブツブツと文句を垂れてはいるものの、素直に隣へ並んで歩き出す幼馴染。
こういうところは昔から変わらない。余程の事態でなければ、泣いていようが怒っていようが、言われるがまま刷り込まれた雛のようにこちらの言葉に従う。
こんなんで大丈夫か?いつか誘拐されるんじゃ?...と、真面目に考えていた時期が懐かしい。
