11月22日は、
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「なんの日か分かるか、奈緒子」
「良い夫婦の日!」
「ちゃう、予防接種日や」
え、なにこれデジャヴ。
「...なんやろ、絶対したことないはずやのに烈とこんな会話した気ぃする」
「デジャヴやろ」
「あ、やっぱ?いやぁ初めてなったわ......ほな、うち用事済ませ「逃すか」...ぎゃっ!」
「まあ待て」
「いやあああ!」
隙を突いて逃亡しようと目論むも敢えなく失敗。
ちなみのこの叫びは失敗への嘆きよりも、肩をガッツリ掴まれたことへの恐怖からくる悲鳴である。ホラー映画か。
「離して!」
「断る」
「う、うちにはやらなあかんことがあんねや!」
「それは予約済みの予防接種よりも優先せなあかんことか?世界でも救うんか?」
「バタフライ効果で結果的に誰かの世界は救うことになるんちゃうかな!」
「その原理で言うたら少なくともオレと病院の人ら、それと今日来る患者何十名の世界は狂わされるやろな。奈緒子のせいで」
「うっ...!今のは覚えのあるセリフや...」
「そこ覚えとんのやったらこの後どうなるかも分かるな?」
いつの間にやら正面に回り込み、ニッコリなのかニヤリなのか、とにかく普段絶対そんな顔しないじゃないかって顔を向けられる。
片方にだけ置かれていた手は両方に乗せられ...否、両手で両肩を固定され、逃亡困難な状況もより強くなった。
正直、恐怖の微笑みだけで動けないんだけどね。
「...どうせうちに拒否権ないやん」
デジャヴではない記憶にある彼とのやりとり...というか去年のことだが、その時と同じなら自分になす術はない。どれだけ拒否したって、最後には大好きな彼に言いくるめられて大嫌いな注射を打つ羽目になるのだ。
そう、惚れた弱みってやつ。ああ、悔しい。
「うぅ...今日は良い夫婦の日やもん...」
「今現在それっぽいやろ。夫婦漫才」
「読み方ちゃうやんか!漫才したくてしとるんちゃうわ!」
「大阪人ならそこは喜んどいたらええんちゃうか」
「全部の大阪人がそうやと思わんとき!...ちゅーか烈のが普段そう言うてるやん!」
「あーそやったなー早よ支度しろ」
「雑!あまりにも雑や!」
なんて口では抗議を唱えつつ、ちゃんと身支度を進めてしまうのだから笑ってしまう。
「...せめて他の日にしてほしかった」
「11月11日にせんかっただけマシやと思え」
「11日...ポッキー&プリッツの日?いや、たしかに世間が楽しい雰囲気の中で自分は注射とか嫌すぎやけど...なんでその日?」
「ポッキーもプリッツも注射の針も同じ直線や...言うたらお前その二つ食べられへんようなるかもしれんやろ」
「知りたなかったわ」
「まあオレなりの配慮や」
「せやったら言わずにおるのも配慮ってこと忘れんとってな。そんでこれもなんやデジャヴ」
「一日に二度も経験出来て良かったんちゃうか」
今回は難を逃れたものの、たしかにそれが実現していたらもうその日を純粋に楽しめなくなっていたかもしれない。
しかし、彼の持論で言うなら今はそれより目先に問題があった。
「これから先良い夫婦の日にこのこと思い出したら烈のせいからね...」
良くも悪くも、彼との思い出は色濃く残る。
とりわけ、こんな騒がしい日のことは忘れたくても忘れられないものだ。生憎、自分は良い部分だけ都合よく覚えていられる機能など持ち合わせていないし。
「あーあーあー、注射と来年からの良い夫婦の日が怖いなぁ!」
「はー...」
「ちょ、溜息て」
「奈緒子、お前やっぱアホやな」
「今それ言う?」
「今やのうても言うわ」
「それもどうなん...」
「まあええ......悪い方のこと、忘れるくらいの思い出作ったらええだけの話やろ」
「え...」
なにそれ、それってそれって、
「プロポーズ?!」
「...っちゅー具合に単純な奴やからな」
いつもならここで弄んだのかと追求するところだけど、出発時間も差し迫ってきたことだし今日はやめておこう。
それに、逸らされる前の彼の真面目な表情は、答えを物語っているようなものだったから。
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