単純脳
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我が家の玄関を開けた先にはいつも彼女がいる。
リビングで寛いでいていても、キッチンで料理をしいても、果ては風呂場で掃除していても、それらの作業を全てやめて出迎えてくれるのだ。
「扉の音と気配で分かるよ」
野生動物か。
思わずそうツッコミを入れたのを覚えている。その直後に「飼い猫も飼い主の足音覚えてるもん!」とよく分からない返しをされたことも。
一応、言っている意味が理解不能なわけではない。使っている感覚器官こそ違うものの、自分が人混みの中にいる彼女をすぐに見つけ出せるのと同じ。
つまり、自分にとって彼女がそうであるように、彼女にとっても自分は”特別な相手”であるという意味だろう。
...うっかり惚気話のようになったけれど、今言いたいのはこれじゃない。
いつも、と言ったばかりでなんだが極たまに例外が発生する。そして今日がその日に該当するらしい。
現に「ただいま」の後、なにも返ってこないまま家の中が静まりかえっている。
こんな時、彼女がいる場所は決まって寝室。
目的の部屋の扉を静かに開けて中を覗くと、像通りベッドの上に小さく丸まった奈緒子がいた。
「奈緒子?」
眠っているかもしれないとは思いつつ名前を呼んでみたところ、布団がもぞもぞと動きだす。それからすぐに名前の主が顔をのぞかせた。
「...おかえり」
「ただいま...具合悪いんか?」
寝起きとは違う弱々しい声に、小さな不安が襲ってくる。
「うん、ちょっと...でも大したことないから」
とは言うものの、やはりいつもとは違う様子にこっちは内心穏やかでいられない。夏風邪か、はたまた食中毒にでもなってしまったのか。
なんて心配していると、彼女の口からは驚きの言葉が綴られた。
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