仲介者
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「...で、深津さんが助けてくれたってオチか?」
周囲にハートが舞っているんじゃないかってくらい幸せそうにしている上田に続きを訊ねる。
慣れとは不思議なものだ。今までであれば、思考が追いつかず置いてけぼりになったり、彼女のこの雰囲気に呑まれそうになったりしていたのに、今では接し方に余裕を持てる。
(...オレも成長したな)
「ううん、自力で倒した」
「いやなんでだよ」
ようやく顔を上げた彼女からの返答に、凄まじい速さで前言撤回をする羽目になってしまった。
「先輩がヒグマに襲われちゃうと思って...死ぬ気で闘ったらなんか勝てちゃった」
屈託のない笑顔で話す姿に、やはりまだ自分は未熟かもしれないと弱気になる。
「おかげで命拾いしたし、強くなれたし...本当、深津先輩には感謝しかないよ...はぁ、大好き...」
「...ポジティブだな、本当」
「だって、先輩がいなきゃ食べられる悪夢のまま今日を過ごしてたかもしれないんだよ?」
「まあ、そうかもだけど...」
「それに先輩、マタギの格好してたから仕留める為に出てきてくれたんだよ、きっと」
「ならそこは深津さんに任せとけよ...」
「でも先輩を危険に晒さずに済んで嬉しいよ」
「...そうだな」
イキイキとしている彼女は嫌いじゃないが、こちらを振り落とす勢いには圧倒されっぱなしだ。
(まあ、それが上田の良いとこでもあるけど)
素直で真っ直ぐな彼女といるのが楽しいもの事実。そうでなければ、交友関係などとっくに破錠していたかもしれない。
「ま、良い夢見れたんなら良かったな」
「うん。謎も一つ解けたし」
「謎?」
「そう。沢北、知ってる?好きすぎて夢に見ちゃうってやつ」
「あー...なんか言うよな」
「でしょ?でも私、今まで見たことなくて...今日それが本当だって分かって感動しちゃった」
「ふーん?良かったな」
「ありがとう」
彼女が礼を述べ終わるのと同時に予鈴が鳴る。
「あ、そろそろ席戻らなきゃ... またなんかあったら聞いてね」
「しょーがねーなぁ」
「そんな言い方しても、ちゃんと聞いてくれるの知ってるんだから」
「...まあ、オレの先輩が関係する話でもあるからな」
「ふふ、そうだね。じゃ、今日も一日、授業頑張ろうね」
そう言って自分の席へと戻って行く彼女をチラッと見ながら、ふと浮かぶ疑問。
(...なんで深津さん、上田のこと好きになんねぇんだろ)
友人目線の贔屓も否めないけれど、こんなにも魅力的な女の子からアピールされ続けて、微動だにしないのは何故なのか。
当然、人には好みがあるし、気持ちに応えないなんておかしい!とは思わない。
(あの人が読めねぇのは前からだけど...こういう時は特に分かんねぇんだよな。まあ嫌ってたらさすがにオレでも分かる...と思うけど)
疑問と考察が脳内を占める中、今度は本鈴が鳴った。