昼下がりに奇妙な会を。
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
何故オレはここにいるんだろう......そう思いながらある二人のやりとりを見つめる松本。
「二宮?」
「和也」
「深津?」
「沢北、先輩を呼び捨てにしたらダメでしょ。ちゃんと敬称つけなきゃ」
「すんません松本さん、交代で」
何故もなにも、理由は分かりきっていた。
今しがた先輩への呼び方を後輩へ指導した女子生徒、上田の訓練。その内容は、彼女が想いを寄せる相手を名前で呼ぶこと。
*
*
*
「深津を名前で呼びたい」
遡ること数分前、松本はクラスメイトから神妙な面持ちで持ちかけられた。
「...呼べば良いんじゃないか?」
「呼びたい、けど...」
「けど?」
「...呼べない」
「なんでだ?」
「......い、から」
「え?」
「...恥ずかしい、から.........それに、」
ここだけ聞いたならば、彼女が奥ゆかしく控えめな性格、と思うだろう。
が、
「お付き合いするようになってから変えるなんて、あからさまでしょ?」
実際はこうなのだ。
「というわけで、松本。どうにかして」
「どうにかって......呼ぶだけならオレはいなくても良いんじゃないか?」
「ダメ!一人だと永遠に呼べないかもしれない!」
「...深津と付き合える見込みが立ってからの方が「ハイかyesで答えてね」...そもそも聞いてはなかっただろ...」
「じゃあ今聞くね。松本、協力してくれるよね?」
さっきと大して変わってない文言は、最早相談というより強要......なんて、心根の優しい松本には言えるはずもない。
彼に出来るのは、差し出された選択肢を答えることだけ。答えないなら答えないで、沈黙=肯定と認識されるのみだ。
「あ、沈黙は肯定だから」
そう、このように。
「...具体的にどうすれば良いんだ?」
「そこを悩んでるから松本に協力を仰いだの。なにか良い案ない?」
「良い案って言われてもな...」
頭を捻れど浮かばない解決策に、廊下で唸る一組の男女という、奇妙な光景が生まれた。
「なにしてんすか、二人も」
そして、そこへ現れたのが救世主こと、後輩こと、エースの沢北である。