一級どころか有段者
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「深津、なにしてるの?」
「呼吸ピョン」
「私も酸素になりたい」
「来世に期待しろピョン」
あれ、もしかしてループしてる?
「深津、今日もかっこよかったね!」
あ、微妙に違うな。
日時問わずこの会話よく聞くのに、未だに時空の歪みを感じる。多分、あの二人があまりに平然と話を進めるものだから脳がバグってるんだと思うけど、オレの反応の方が正常と信じたい。
それから、これはあくまで聞こえてくるのであって盗み聞きではない...と、一応弁明しておく。
てか、帰宅部のオレや上田はさておき、深津の方は早く部活行かなきゃじゃ......あ、そういや今日日直だったっけ。
道理で上田がいつまで経っても離れないわけだ。普段は「深津の生活を邪魔するのはポリシーに反する」って放課後は必要最低限の挨拶くらいしかしてないのに。
でも上田なら、この機会使って代わりに日誌書くとか申し出そうだな。そんで断られるだろうな、深津の性格的に。
「日誌代わりに書こうか?」
「助けは無用ピョン」
おっ、当たった。
そろそろオレも名物コンビ検定級位者だな......持ってても意味ないけど。
「それに筆跡を晒すリスクを背負う気もないピョン」
「悪用なんてしないよ!...最初は深津の字体や文字間隔及び癖からその日の気分が割り出せるかもって、期待はしてたけど」
「出来なかったのかピョン」
「わざと字体安定させずに書いてるでしょ?私に見られた時の為に先手を打って」
「念には念を、ピョン」
「その抜かりなさが好き!深津の書くいろんな文字も拝めて結果オーライです!」
訂正、オレには級位すらまだ早かった。
コイツらの話してる内容が微塵も理解出来ん。字体から割り出し?見越して先手?どこの世界の頭脳戦だよ。IQに20差があると会話が成立しないってこういうことか、常人には到底理解し得ない。
そりゃ周りも置いてけぼりになるわな。
「あ、終わった?」
「ピョン」
「お疲れ様。持ってってそのまま部活?」
「ピョン」
「じゃあ名残惜しいけどここでお別れだね...部活頑張っ「早く支度しろピョン」...え?」
「どうせ方向は同じ、下まで一緒に行くピョン」
「え...!あ、あの、7秒だけ待って!」
告げた直後、目にも留まらぬスピードで帰り支度を終え、再び深津の元へ駆け寄る上田。
宣言通り7秒きっかりとは恐れ入った。好きな相手が絡んで身体能力が跳ね上がるなんて芸当、今のところオレには出来そうもない。
「お待たせ!」
「待った内に入らないピョン」
「深津の人生の7秒だから貴重だよ」
「別に良いピョン。ただし...」
「時と場合による!」
「ピョン」
身支度7秒より会話の方が時間使ってない?......ってツッコミは野暮か。
なーんでくっつかないかな、この二人。これだけお互い知り尽くして、多分好き合ってるんだろうに。
...それが分かるには有段者が必須条件、てとこか。
あー、早よ付き合え。