一級どころか有段者
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
うちの学校には名物コンビがいる。
「深津ー!」
一人は彼女、上田奈緒子。
工業高校の数少ない女生徒で、オレと同じ三年生。それと、クラスメイトでもある。
彼女が有名なのは、貴重な女子だからとか、かわいいからとか、抜きん出て他者より優秀だとか......ってわけではない。正確にはそれらもなくはないが、彼女の名が学年どころか学校中にその存在を知らしめたのには、他の理由がある。
「深津、なにしてるの?」
「呼吸ピョン」
「私も酸素になりたい」
「来世に期待しろピョン」
ドライ且つ遇らい慣れた返答をするのは、名物コンビの片割れ、深津一成。
そう、彼女が先程から呼んでいる人物である。
彼はバスケで日本一と謳われる、我が山王工業高校の現主将。彼もまた、オレや上田と同じクラスの生徒だ。
肩書きだけでも十分すぎる程の知名度だが、やはり彼にもこの学校で名物と呼ばれるだけの理由が他にある。なんなら、その理由の方が先と言ってもおかしくない。多分タッチの差くらいだったから。
そろそろ、この二人が何故名物コンビと呼ばれるようになったのかの説明に入ろう。
「深津、今日もかっこいいね」
「そうかピョン」
「褒め称える形容詞を使われた人が罪人ならとっくに捕まってるし、無期懲役...いや終身刑か死け......やだ!死なないで!私が代わりに服役するし罰も受けるから!天寿全うして安らかな眠りについて!」
「言われずとも生きてればいずれ死は迎えるピョン」
「潔い!そんなところも好き!」
これだよ。
公共の場で白昼堂々こんなのやってたら、誰だって有名になる。上田の第一声がフラグだった、説明の意味全然なかったな。
つーか、結局最期迎える流れじゃね?
さて、この二人の関係は”バカップルの日常”では済まされない。
だって、付き合ってないんだよ。
傍目からでも分かりやすい上田から深津への好意は言わずもがなではあるけど、深津の方だって満更でもないはずだ。じゃなけりゃほぼ三年もの間、こんなクセの強い人間の相手なんか出来ないだろう。どんだけかわいくてもノイローゼになるわ。
一体何人の男子生徒が上田に夢を抱き、この実態を目の当たりにして去っていったことか。眼中にもないせいか当事者は気づいてないくせに、深津の方は全部お見通しみたいな状況なんなんだよ、ホント。
早よ付き合え。
...コホン。
とにかく、この二人が名物なのはこういうわけだ。