事実を言ったまでですが?
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TVインターフォンとは便利なものである。玄関へ行かずして来訪者の確認及び会話が可能なのだから。すぐに出られない時や予定外の訪問ではおおいに役立つ優れもの。
画面を見なくても相手が誰か分かればもっと便利なのに。個人識別機能でも搭載されないだろうか。
「確認せえへんの?」
「.........」
「なあなあなあ」
「ちょっ、うるさっ...」
「なあ」
「...するわよ、するけど」
「けど?」
「ちょっと、その......あれよ」
「どれ?」
「じゅ、準備的な......心の」
「せやったらボクが代わに確認したる」
「は?なに、ちょっと待って!」
「あ、昨日のお姉さんや」
こちらの静止も聞かず画面を確認したうえ、容赦なくその人物が誰だったか伝言までするとは......鬼か?
もう少し間をとってほしい、間を。
「はぁ.........」
「気ぃ重いんやったらボクが出てこよか?」
「やめてホントやめて」
「けど遅かれ早かれ顔合わせせなあかんし」
「そうだけど今は大人しくそこ座ってて。あとなにその恋人を家族に紹介するみたいな言い方」
「ちゃんとツッコミ入れてくれるとこ好きやわぁ」
「あっそ......はぁ、とりあえず出てくる」
「いってらっしゃーい」
ひらひらと手を振りながら送り出す彼の穏やかさとは反対に重い足取り。
余程大きな音を立てない限り部屋の外へ響くことはない、そう解っていても物音を立てまいと慎重になってしまう。泥棒みたいに、抜き足差し足忍び足。
そうして無事玄関へ辿り着いたまでは良いものの、なかなかドアノブへ手がのびない。
「...実は宅配便とか、それか誰か間違ってウチのを鳴らし「さすがにそらないんちゃう?」...ぎゃっ!」
相変わらず可愛らしさのかけらも含まない悲鳴なのはもうこの際気にしないが、突然独り言に割って入られたら誰だって驚くだろう。
慌てて口を塞ぎ後ろを振り返ると、声と同じく飄々とした様子の彼がそこに居た。
「驚かさないでよ...!」
「なんで声顰めとんの?」
「お姉ちゃんに聞こえるといけないから」
「この音量でそれてやばない?部屋の防音環境どないなってんの?生活音筒抜けやん」
「んなわけあるか!」
「自分も声デカなってんで」
「くっ...!」
「なあなあ」
「...なに」
「なんやかくれんぼみたいでワクワクせえへん?」
「お願い、お願いだからちょっと黙ってて」
かくれんぼ、と言うのはあながち間違ってはいないのだけど、そんなこと言ってる場合じゃない。
「...てかなんで着いてきてんのよ。待っててって言ったよね?」
「いやなあ、言うてへんことあってん」
「なにを」
「さっき見た時やけど、お姉さんなんやスマホと睨めっこしてはったで」
「...ってことは」
ここまでの行動をひっくり返すようバタバタと寝室まで戻る。
未だ充電中のスマホを確認をすると、予想通り新たにメッセージが届いていた。内容は至ってシンプルなもの。
《来たよ》
「やばい普通のことしか書いてないのにものすごいホラーに見えるやばいどうしよ」
「あちゃー」
「あちゃー、じゃないよどうしよ?!」
「これ夜やったら間違いなく事件起こるやろなぁ」
「言ってる場合か!」
言い終わるのと同じタイミングで再び呼び出し音が鳴り響いた。音につられるようにふらふらと玄関へ向かう。
今日は良心滅多刺しにされることばかり起こるな、と二度目の投げやりモードに突入しながら今度こそ扉を開けた。その先に居るのはもちろん我が姉。
「お、おはよ、お姉ちゃん」
当事者のくせにまるで他人事のようだが、吃りながらも挨拶が出来る自分に少しだけ感動した。