そーゆーわけでよろしくね
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「迷惑.....よな、ボク」
反射的に顔を上げると、困ったような顔でこちらを見ている彼と目が合った。
「えっ、あの、迷惑だなんてことは」
「けどさっき怒らせてもうたし」
「や、あれはその、つい...」
「酔っとる時のこと間に受けたボクがあかんかったんかなぁ」
「で、てもほら!私が無理に連れてきた感あるし」
「ほなOKやね」
「エッ」
十数秒前のしおらしさは何処へやら、パッと笑顔を浮かべる彼のテンポについていけず、間抜けな声で返してしまう。なにその切り替えの早さ。
とは言え、酔った勢いで話を進めた自分が悪いし、事情知ってて今更出て行けなんて無慈悲なことは出来まいよ。
言い出しっぺも自分、大人しく腹を括るかない。
「......あとでルールとか決めるから」
「やっとその気になってくれたんやね」
「ちょっとその言い方はやめようか」
「つい、や」
「相手によっちゃシャレにならなくなる冗談はやめなさいよ」
「はははっ」
「笑って誤魔化さない...はぁ、いい大人が二人揃ってなにしてんだか」
本当、28にもなって......ん?
「どないしたん?急に固まって」
「淳君、ちょっと聞きたいんだけど」
「うん?」
「キミ、いくつ?」
まだ思い出しきってないだけでもしかすると聞いてたのかも知れないけど、彼の年齢は?
若く見えるけどバーに居たから成人してる、はず。
てかしてなかったら今度こそ本当にやばい。
「いくつに見える?」
「今ホントそーゆーのいいから、頼むから真面目に答えて」
「ほんの遊び心やんか」
「こっちは社会的生存権がかかってんのよ」
「しゃあないなぁ。奈緒子さんより8つ下やで」
8つ、と言うことは20歳.........ギリギリセーフだけどあっっっっっぶな......昨日28になってなかったら終わってた、考えるだけでも恐ろしい...。
しかしそれにしたって20歳か、若い。
「ちょっと前まで高校生か......なんか......うん」
「興奮したん?」
「んなわけあるか!」
「おお、ええツッコミ」
「拍手しなくていいから!......ったく、やっぱこの話やめようかな」
「えー、それはないやろ」
「安心なさい、迷惑かけたお詫びに寝泊まり出来るとこは一緒に探すし宿泊費も負担してあげるから」
「金に物言わす権力者みたいな発言やなぁ」
たしかに、とは思いつつ稼いでる方なのは事実だ。
特別な趣味もないから出費も少ないし......言ってて悲しいけど。
「知らない人の家で家事代してまで暮らすより一人の方が気楽じゃない?」
「家事代行は交換条件やし、奈緒子さんは知らん人ちゃうで」
「そうだけど」
「それにボク一人やと寝られへん」
「逆にそれ今までどうやって生きてきたの?」
「まあさすがにそれは冗談やけど」
「おい」
「そもそも成人しとんのになにが問題なん?さっきまで話まとまっとったやんか。ボクにイラついたんだけが理由やないやろ?」
いや、イラつかせた自覚はあるのか......ともあれ、彼の言う通りそれだけでやっぱやーめた、迷惑料に宿泊費負担、なんて普通なら選択しない。
「ちょっと前まで高校生だった子を住まわせるのはやっぱダメな気がするの。主に私のメンタル的に」
「そんだけ?」
「28歳と20歳の溝って結構深いのよ。成人してても8歳差よ?私がキミの年齢の時にキミまだ小学生よ?分かる?」
「その時代はもう過ぎてんで」
「高校生の時に私はもう20代後半だし」
「高一の時やったらギリ前半やんか」
「良心の呵責ってものがあんのよ」
「ボクかて宿泊費負担させるんはちょっとなぁ」
「あーもー!!!」
「ほらほら、決めたことなんやから諦めて?ボクここ追い出されたら困るし...あ、奈緒子さんがボクのこと困らせたいんやったら別やけど」
「そんな趣味あるわけないでしょ!」
「せやったらもうこの話は終いやね」
言い終わると同時にパンッと手を打ち鳴らす。最後までペースを持っていかれてしまった。
前夜から二転三転した話は当初の通り彼が居候することで決着し、それに満足したらしい彼はニコニコ握手を求めてくる。
「改めてこれからよろしゅう、奈緒子さん」
もうどうにでもなれ、と投げやりモードで握り返したのを合図に彼との同居生活が幕を開けた。