さよなら悪夢、こいこい吉夢
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「あ、そういえば」
失礼な思考を見透かしたのか、謎のキャラXが再び口を開いた。
「は、はい?」
「自己紹介がまだだったね」
「あ、はい...」
「ボクは妖精」
「審議」
「可決、妖精」
「どっちかというと妖怪じゃ...」
「妖精だよ」
「...にしては不気味さが強め」
「妖精の姿形は様々、定義なんてないんだよ」
「そうかもしんないけどさぁ」
「というか妖精に夢見すぎだよ?いくら夢の中だからって」
「絶妙にイラッとする......そんでやっぱ夢なんだ」
「現実が良かった?」
「絶対嫌」
「だろうね。さあさあ、お望みの起きる時間だよ」
「...!ほ、本当?」
「ホント」
「本当に、本当?」
「ホントにホント」
「...はぁ、やっと」
「随分と苦労したみたいだね?」
「いやもうホンッッッッットに」
「うん、なんか...うん、お疲れ様」
「同情は良いから早く起こしてもらえると助かるわ」
「任せて。ほら、この香り分かる?」
「香り......あ、なんか...良い香りする」
「その香りのする方へ行ってごらん。それでここから出られる」
「そんな異界からの脱出みたいな言い方」
「あながち間違ってないだろう?」
「まあ......えーっと、香りのする方...って、ちょっと待って」
「早く帰りたいんじゃないの?さあ、香りのする方へ行ってごらん」
「この先崖なんだけど」
「いいからいいから、香りのする方へ行ってごらん」
「だからあの、道ないって」
「気にしないで、香りのする方へ行ってごらん」
「気にするわ!」
ダメだ、話通じない。お助けキャラに見せかけた悪魔かな。
...まあいっか、本当に解放されるかもしれないし。
「ふぅ...」
「準備はいーい?」
「ヒーローショーみたいなノリで聞かないで」
「緊張しなくても大丈夫」
「はいはい」
「ボクを信じて」
「はいはい」
「ちゃんと聞いてる?」
「はいはい」
「聞いてないね」
「はいはい」
「まったく仕方ないなぁ......安心してな、悪夢はホンマに終いや」
「はいは......あれ、なんか今「はい、では最後に問題!」...は?」
「この香りの正体はなーんだ?」
「は?」
「ヒントは...ボクを見たら分かるよね!」
「分かるか!」
「よーし、それでは...」
「ちょっと待って心の準備...いや、それより!」
「さよなら三角、またきて四角!」
「待ってってば!てかそれなに!?」
「おかえりなさーい!」
「〜〜〜っ!」
明るすぎる掛け声と共に、物理的だが思いの外優しく押された背中。
繰り返し見た夢のように落ちていく時の独特な不快感はなかった。代わりに、たくさんの疑問が頭の中で溢れ返る。
結局謎のキャラXはヒーロー的な存在だったの?なんであの時は自由になれたの?最後のやり取りはなんなの?忘れてたけど元カレいつの間に消えた?
こんなにインパクト強いのに、起きたらこの事は忘れちゃうの?
ああ、もう!大体香りのする方ってなに、そんでなんの香り?
でも、絶対知ってる気がする。段々強く、鮮明になってくるこの香りは...
...あ。
「...りん、ご?」
「だーいせーかい」
この気の抜ける程穏やかな声に、今では見慣れた顔。手に収まる真っ赤な果実。
忙しなかった鼓動が自然と落ち着いていく。
ああ、本当に良い香り。
