さよなら悪夢、こいこい吉夢
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一体どのくらい経ったのか、時計も体感も当てにならないせいで皆目見当もつかない。
あれからまた場面が変わったり、鬼達(便宜上)に襲撃されたり、死に物狂いで走ったり、高い所から落ちたり...を繰り返して、夢なのに疲労感がMAX。身体はもちろん、中途半端に意識がある分、心の健康にものすごく悪い状態でn回目のリスタート。
かつ、正直最大のピンチかもしれない。
夢であるが故、あくまで感覚的な判断によるが、例によって身を潜める為の場所を探していたところ、何故か目前に広がるのは断崖絶壁...と、元カレらしき後ろ姿。
おかしくない?廃屋だか昔の住居だか知らないけど、一応建物内走ってたじゃん、外出た記憶ないよ、私。
てかなに、火サスでも始まるの?だとしたらこの配置解せないよ?なんで私が犯人で、元カレが刑事のポジション?あと元カレ、せめてこっち向け。空中に向かって語りかけるのやめろ、私はこっちだ。名指ししといてイマジナリーと会話とはどういう了見よ?
あー、フラグ建てるんじゃなかった。
...と、ツッコミどころは尽きないのに、やはり口に出す自由はこの中では許可されないらしい。
やっと喋れると思ったら、
「は?なんて?聞こえないんだけど?早く帰ってくれない?」
やたら刺々しい口調ときた。事実とはいえ我ながら攻撃性が高すぎる。苛立ちは連動する仕組みなの?
...にしても、自分の夢で体験してるのも自分なのに、まるでドラマを見ている気分だ。火サスかどうかは別として。
「信じらんない、もうホント最悪...なんなのよ...」
うんうん。
自分のことだし当然だけど、わかる、わかるぞ、その気持ち。
「顔くらい見て話しなさいよ!」
それは本当、その通りだわ。
「意味分からない」
うん、私も。
「順序ってもんがあるでしょ?それに不誠実よ」
...うん?
「友人ではいたいなんて都合良すぎると思わないの?赤の他人に戻ればいいだけ、それで終わりだよ」
うわぁ、もしかしなくてもこれ、別れ話の時の記憶じゃない?
あったなー、こんなこと。あったあった.........はぁ。こんなものを見せられるくらい悪いこと、私しでかしたっけ?
私の身体よ、寝ても覚めても苦しいのなら、お願いだからとっとと目覚めてくれまいか。
なんか知らないうちに涙まで出てるし。夢のくせに感情乱れすぎだよ、私。
あーあ。
同じフィクションでも、これがテレビや小説の中だったらなぁ。こんなピンチの時はヒーローが颯爽と現れて、助けてくれるのがお約束なのに。
もう飛び降りて強制リスタートしてしまおうかと、背にある崖の有効活用法の為、奇跡的に連動した身体を反転させる。
...が、予期せず思惑は終わった。
「泣かないで」
真後ろから聞こえた知らない、正確にはこの夢の中でまだ記憶のない声。
「だ、だれ...」
ゆっくり首を回すと、視線の先.........より、だいぶ後ろの方に声の主はいた。
ヒーローと呼ぶには独創的で、悪夢を見ている最中だと再認識させられはしたものの、不思議と嫌悪や恐怖はない。あるとしたら困惑一択。
「え、ホントだれ、なに?!そもそも生き物?...そして遠いな!」
「あ、じゃあ...」
「今度は近い!てか速い怖い!」
「細かいことは気にしないで」
無理だろ!と叫びたかったのに、距離が近づいたせいで風貌がより鮮明化され、意識が逸れる。
瓶だか壺だかを被せた頭、絵本に出てくるおばけみたいに布っぽいもので足元まで覆われた体。それと、さっきは離れていてよく分からなかったが、手から伸びているリードの先には小さな亀がいた。
...なんだこれ。
上から下まで、どれだけじっくり観察しても分からないし、これに悪い感情を抱かない自分もどうかしている。本当になんなの、これ。
